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ファミマ、1万店で光る「デジタル看板」の奮闘劇 昨年度に黒字転換、収益改善の舞台裏とは?

東洋経済オンライン / 2024年8月17日 8時0分

業績が改善した背景には、広告主の増加と多様化がある。ファミマビジョンで流れる映像は、子会社が制作する「番組」と広告主が出稿する「CM」に分けられる。番組はサイネージに注目してもらい、CMの視聴率を上げるために放映している。

サービス立ち上げからしばらくは、店頭に商品を配荷しているメーカーのCMが大半だった。しかし、一般的なコンビニの商品数は2500品目程度、全国の店舗に置かれているナショナルブランドのメーカーとなると、日本コカ・コーラやサントリーなど、ごく一部のメーカーに限られる。

それが「店舗数を5000店、6000店と増やしてきたことで、広告主の属性も変化してきた」(サイネージの設置やコンテンツ制作を担うゲート・ワン取締役COOの速水大剛氏)。

ネットフリックス、アマゾンプライムビデオなどの動画配信サービスや生命保険など、ファミマで販売していない商品やサービスの広告が増えてきたのだ。足元では店頭に商品を置かない広告主が全体の6割を占めている。

ファミマビジョンは、従来のマスメディア経由の広告と比べ、外出中の消費者に向けて直接配信できる特徴がある。老若男女問わず幅広い層にリーチできる点も強みだ。

加えて、電車広告など、外出中に目にするほかの広告と異なり、映像と音声で訴求できる。デジタルサイネージ導入前からファミマの店内放送で流れていた「ここがすごい!」でおなじみの帝京平成大学や、合宿免許のCMに聞き覚えのある人も多いだろう。

こうした特徴に設置店舗数の増加、リーチできる規模も拡大したことで、広告主の増加と変化につながったようだ。関係者は「設置店舗数が少なかった頃、ある広告主に『街中で全然見ないじゃないか』と怒られたこともあったが、今では積極的に広告を出してくれている」と明かす。

販促だけでなく「認知のためのメディア」に

広告主の変化は規模拡大の効果だけではない。昨年からは、全国一律の配信方式から、都道府県別や学校の周辺など立地に合わせた広告の配信も可能になった。

これによって、資金力がない地場メーカーや自治体の出稿も増えている。また、学習塾や企業のブランド広告など、親世代や就活生の認知向上を目的とした広告主も増えた。ファミマビジョンの取引先社数は2024年度には約250社となり、前期比で7割増加する見込みだ。

リテールメディアについては、「メーカー側も付き合いで一度は出稿するが、リピート利用につながらず、広告媒体として成立していないケースも多い」と指摘する広告代理店幹部の声もある。

そこで、ファミマビジョンは店舗に配荷するメーカーからの出稿も増やしながら、さらにクライアントの幅を広げる構えだ。この点、商品を販促するためのメディアでなく「認知してもらうためのメディア」としても広告主に認識されつつあることは、広告媒体として一定の地位を確立した証左といえる。

もちろん、新たな収益源を開拓する一方で、コンビニの本業がおろそかになっては元も子もない。この点、速水氏は「立地の似たサイネージ設置店舗と未設置店舗を比較すると、設置した店舗のほうが客数の伸び率が比較的高い」など、プラス効果を強調する。

「副業」で得られた収益や取引先との関係を本業の活性化、競争力強化につなげられるかが、今後の焦点になりそうだ。

冨永 望:東洋経済 記者

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