高裁、異例判断「取り調べ検事が被告に」の根本問題 「プレサンス事件」が迫る捜査手法の転換
東洋経済オンライン / 2024年8月17日 9時30分
これまで長い間、日本では、警察によって逮捕されたら長時間の取り調べが行われることが当然視され、取り調べによって犯人から自白を獲得することが捜査における最重要課題とされ続けていた。その結果、数多くの冤罪事件が生まれてきた歴史がある。
今回の事件における検察官による犯罪的な取り調べも、そのような取り調べ依存型の捜査観が招いた事件ともいえる。
日本国憲法では黙秘権が権利として保障されているが、日本型の取り調べ依存型の捜査は、本来、権利として保障されているはずの黙秘権を軽視ないし無視することにより成り立ってきた。
日本国憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と定めており、これは一般に黙秘権と呼ばれている。警察や検察における取り調べの際にも、当然に黙秘権が保障されている(刑事訴訟法198条2項)。
黙秘権がなぜ犯罪の疑いをかけられた被疑者に保障されているのか、疑問に思う人もいるかもしれない。
犯罪を実際にしてしまったのであれば、正直に罪を認めて洗いざらい話して謝罪、反省をしたほうがいいのであり、また、もし犯罪をしていない、冤罪なのであれば、きちんと自分は無実であることを主張して真実を話せばいいのではないかと考えるかもしれない。
しかし、憲法は黙秘権を権利として保障している。憲法が保障しているという意味は、法律によっても黙秘権を廃止したりすることは許されないという点にある。黙秘権には極めて強い保障が与えられているのである。
この理由はいろいろあるが、端的にいって、それは歴史的にみて「黙秘権がないと公平な刑事手続が行われないから」という点にあると筆者は考えている。
素朴に考えても、例えば、日常生活において何かミスをして誰かからきつく叱られたとき「どうしてこんなことをしたの!! 理由を言いなさい!!」などと何か言うことを強く要求される場面を思い浮かべてもいいかもしれない。
このような場面では、何を話しても相手の逆鱗に触れる可能性が高く、何を言っていいのかわからない事態に陥ることも少なくない。そういうときにもし黙秘権が権利として保障されていれば「黙っていること」「何も言わないこと」を正当化してくれることになる。
とにもかくにも権利として保障されている以上、話さなくていいのだ。これは、このような何か発言を求められ追及されている立場の人間にとっては救いとなる。
供述調書には話したことがそのまま記載されない
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