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相対性理論なら「人が100倍長生きできる」しくみ 電車の実験で検証、車内と外で時が変わるワケ

東洋経済オンライン / 2024年8月21日 18時0分

これまでずっと、時間の進み方は、誰にとっても同じであると考えられてきました。

ところが、実は時間は絶対的なものではなく、見る人の立場によって伸びたり縮んだりするものであり、また、ある人にとっては同時に起こることが、別の人にとっては同時に起こらない場合があるというのです。

「時間とは相対的なものであり、これは時間の本質的な性質である」と、アインシュタインは結論づけました。

彼は、光速不変の原理(光の速度が誰から見ても一定であるという事実)から出発することで、従来の時間の概念を根底から覆したのです。これが、特殊相対性理論の神髄です。

等速直線運動をするものは、時間の進み方が遅くなりますが、アインシュタインは、特殊相対性理論のなかで、時間がどれくらい遅れるかを計算できる「時間の遅れの式」を導き出しています。この式からは、動くものの速度が光速に近づけば近づくほど、時間の遅れの程度が大きくなることがわかります。

たとえば、光速の約50%の速度で動くものは、私たちにとっての1秒が約0.87秒に、光速の約90%の速度で動くものは、私たちにとっての1秒が約0.44秒になることが算出できます。

このように、速度が光速に近づけば近づくほど、時間の遅れる程度は大きくなるので、理論上、これを使って「長生き」することは可能だと思われます。

100年分の人生を送れるわけではない?

周囲との時間のずれが生じることから、浦島太郎同様に、自分にとっての1年が周囲にとっての100年だったといったことは起こりうるわけです。しかも、浦島太郎のように、玉手箱を開けたとたん、おじいさんになるといったこともない。

しかし、ぬか喜びは禁物です。

本人にとっての1年が周囲の人々にとっての100年だったとしても、単に周囲との時間のずれが生じているというだけであって、その間に100年分の人生を送れるというわけではありません。

ちなみにより正確には、仮に光速に極めて近い速さで移動できる電車があったとしても、元いた位置に戻ってきて地上の人と会うためには、電車を減速して(負の加速をして)その向きを変える必要があります。

そして、そのような運動は、等速直線運動ではありません。ですから、このように加速を含んだ運動のもとで何が起こるのかに答えるには、もう少し詳細な考察が必要になります。

しかし、この場合でも、浦島太郎のような効果が電車で旅した人と地上に残った人との間に生じるという結論は変わりません。

野村 泰紀:カリフォルニア大学バークレー校教授

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