「パレスチナ問題」こんなにも複雑になったなぜ 人気世界史講師が今さら聞けない常識を解説
東洋経済オンライン / 2024年8月23日 17時0分
※第1次世界大戦後のパリ講和会議で大戦に敗れたドイツの植民地やオスマン帝国の支配領域が戦勝国に分配される際、ただ植民地の宗主国が代わるのではなく、民族自決を前提に分配した。この植民地だったところは独立までとりあえず管理しておくこととし、これを「委任統治領」と呼んだ。委任統治領はA、B、Cの3ランクに分けられ、Aは「国民国家を形成できるけどちょっと待っててね」、Bは「国民国家を形成するにはまだ時間がかかるね」、Cは「国民国家形成はまだ無理」というもの。
第2次世界大戦終結直後のパレスチナの人口を見ると、パレスチナ人58%、ユダヤ人33%という割合でした。その間、イギリスはパレスチナにどういうかたちで独立国家をつくるか、ユダヤ人の代表とパレスチナ人の代表に様々な案を提示しますが、どれも合意に至りません。
第2次世界大戦が終結した頃から、ユダヤ人の過激派はパレスチナを委任統治しているイギリスへのテロを起こします。第2次世界大戦で疲弊していたイギリスはパレスチナの委任統治を終了し、パレスチナをどうするかは国際連合に委ねられるのです。
国際連合で議論された結果、1947年にパレスチナにユダヤ人国家とパレスチナ国家の2つを樹立することが決まりました。いわゆるパレスチナ分割案です。ただ、土地面積でいうとユダヤ人国家に56%、パレスチナ人国家に43%と、人口では少ないユダヤ人のほうに多くの面積が割り当てられるという案でした。そのためパレスチナ人にとっては到底呑めるものではなかったのです。
パレスチナ分割案を受けてユダヤ人は1948年にイスラエルの建国を宣言します。するとエジプト、シリア、ヨルダンといった周辺アラブ諸国がイスラエルに宣戦布告する第1次中東戦争が始まります。
パレスチナ人が「大災厄」と呼ぶ悲劇
この戦争にイスラエルが勝利し、イスラエル国家の存続が決定しただけでなく、どさくさに紛れて領土を拡大させます。パレスチナ人は国際連合のパレスチナ分割案を受け入れず、つまり、パレスチナ人国家は建設せずガザ地区とヨルダン川西岸地区に分かれるかたちで多くの人が難民となります。この悲劇をパレスチナ人は「ナクバ(大災厄)」と呼んでいます。
「たられば」になってしまいますが、なぜこのときイスラエルに武力による国境線の変更は認められないと国際社会はいえなかったのか? イスラエルの領土はあくまで国連分割案の国境線どおりだということになっていれば、その後の歴史は違ったものになっていたと思います。
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