「歯垢を除去するだけ」動画"441万回表示"の驚き 投稿した歯科医師に「動画に込めた思い」を聞く
東洋経済オンライン / 2024年8月23日 8時0分
歯を守るために歯を磨くことの大切さは以前からいわれてきた。だが、「今は歯周病などが全身の病気と関わりがあることがわかってきたので、歯科医が歯のことだけ注意喚起すればいい時代ではなくなった」と吉田さん。このため、SNSなどでの発信を続けているそうだ。
歯磨きの出来が全身の病気と関わってくるとは、どういうことだろう。
食後に歯を磨かないなど口の中のケアを怠っていると、虫歯、歯周病、口臭の3大口腔トラブルが起こることは古くから知られている。
このうち歯周病は放置すると歯を失うことになるばかりか、糖尿病や脳卒中、血流に入った細菌が損傷のある心臓弁に付くことで高熱が出たり、心臓弁が損傷したりする心内膜炎、アルツハイマー病、大腸がん、早産や低体重児出産といった病気やトラブルにつながる可能性が近年、報告されている。
歯周病菌が体内に入り込む
歯周病は口の中に棲み着いている歯周病菌が歯垢で増殖し、歯ぐきやその周辺に感染する病気だ。かなり悪化しても自覚症状がほとんどないため知らない間に進行し、歯ぐきが赤く腫れる歯肉炎という段階を経て、歯を支える骨などを壊していく。
「粘膜や皮膚にできた傷などから細菌が血管内に侵入し、血液中で菌が増殖する状態を『菌血(きんけつ)症』と呼びますが、例えば、歯周病で歯ぐきの粘膜が破壊されて歯周病菌が体内に入り込むと、いろいろな所で炎症が起こります。
そしてその炎症によって毒素が作られ、例えば、それが血糖値を下げるインスリンの働きを阻害する。その結果、血糖値が上がって糖尿病のリスクを高めたり、糖尿病の人の血糖コントロールを悪くしてしまったりするのです」(吉田さん)
ほかにも、毒素によって血管の壁にプラークがたまって動脈硬化が進み、脳卒中の原因となることも知られている。
さらには、歯周病菌は本来は「血液脳関門」によって、余計な物資が入らないようになっている脳にも入り込み、アルツハイマー病の発症や進行に関わっているとも言われ始めた。
吉田さんによると、最近はこれらに加え、口の中の細菌が体内に運ばれるもう1つの「ルート」が注目されているという。それは胃腸へのルートで、飲み込んだ菌が胃酸で死滅せずに小腸や大腸まで到達し、そこで腸内環境を変えてしまうというものだ。
実際に、口の中の細菌が小腸や大腸がんの人の腸から検出されたことも報告されている。
これらが、“歯周病は全身病”といわれる所以(ゆえん)だ。では、こうした健康問題を防ぐにはどうすればいいだろうか。
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