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オリンピックからビジネスパーソンが得るべき教訓 なぜ、我々は判定やルールに不満を感じるのか

東洋経済オンライン / 2024年8月23日 12時0分

ビジネスの世界における「競争のルール」とは何か。詐欺はいけない、贈収賄はいけない、窃盗はいけない、暴力はいけない……といった「法令上禁じられていること」「社会通念上、やってはいけないこと」も、もちろん大切なルールであるが、経営学の中ではもう少し踏み込んで、競争のルールが捉えられている。

たとえば「ムーアの法則」は、半導体産業を支配している、競争のルールである。米インテル社の創業者のひとり、ゴードン・ムーアが1965年に論文で提唱した「半導体の部品数は2年ごとに2倍になる」とする予測のことであるが、見事に1975年までの10年間に当てはまり、その後もおおよそ当てはまったことから、実際には経験則・予測であったこの現象に「法則」の呼び名が与えられた。半導体産業では恐るべきことに、現在に至るまでほぼこの法則が成り立っている。

この法則性が意識され始めた1980年代からは、半導体産業では、ムーアの法則で予測されるスピードに沿って、技術者たちは研究・開発に取り組むようになった。コンピュータや通信機器などの関連産業も、ムーアの法則に従って半導体性能が高まることを前提に機器やアプリケーションを開発するようになった。経営者の投資の意思決定でさえ、ムーアの法則に支配されている。どんなタイミングで、どれだけの性能の半導体を、どれだけの規模で生産するか、この法則に沿って経営計画のロードマップが引かれてすらいるのである。

こうした「暗黙的だが、業界を支配している、競争の前提条件」は、どんな産業にも存在している。自動車産業では2016年以降、「CASE」という言葉が流行するようになった。Connected、Autonomous、Shared、Electricが、これから十数年の自動車の進化の方向である、と。ダイムラーAGの会長であったディエター・ツェッチェが、2016年のパリモーターショーで用いて以来、この言葉は業界で広く浸透し、自動車メーカーのみならず部品メーカーや関連サービス業界まで、この4テーマを軸に技術開発、事業開発が進められるようになった。

あるいは、アパレル業界の流行色。流行色はあらかじめ2年前に国際流行色委員会で決定される。「作られた流行」だなどと野暮なことは言ってはいけない。もしトレンドを外すようなことがあれば、業界各社は大変な苦境に直面することになる。当然、バリューチェーン上の細分化された各工程の会社も、経営が揺らいでしまう。そしてまた、売れなかった服は廃棄や死蔵在庫となることから、環境負荷も高まってしまうのである。毎年のニーズ変化で業界全体が揺らいでしまうリスクを回避するため、業界全体として流行色を決定しているのだ。ともかくも、この流行色という業界のルールの中で、各社は商品を企画開発・販売していくことになる。

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