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一風堂や山頭火が頼る「製麺企業」の波乱なドラマ 稲盛和夫さんから教えてもらった大切なこと

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 10時0分

20代で「日本一のラーメン店」に選ばれた有名店「中村屋」の店主・中村栄利さんを専任シェフに迎え、現地の料理人らを招待してラーメンの調理や試食を体験してもらう講習会を開催した。食専門のメジャーな雑誌に掲載され、注目が集まった。

関わる人、取引先、ライバルも含め、業界全体の発展と成長のため、サンヌードルに何ができるのかを考えた1つの形だった。

「ラーメンラボ」は、アメリカのラーメン認知がさらに広がるきっかけとなり、サンヌードルはイギリス、フランスなどの欧州地域へ、2017年からはカナダ、メキシコなど中南米への輸出をスタートさせた。

一方で、どれだけ業績が上向いても、つねに直面するのが、働く従業員にいかに長く、やりがいと幸福感を持って仕事を共にしてもらえるかという「難問」だという。これ以上のことはないほどに、その姿勢を試されたのが、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大だった。



「これまで調子のいいことを言ってきて、ここでひっくり返すことにはならないか、自分に問い続けました」

危機に備え蓄えてきた内部留保が、ピンチの初期に力を発揮した。夘木さんが300人の全従業員に最初に通知したのは、「解雇はしないから安心してほしい」というメッセージだった。

ところが、解雇者を対象に州や国が支給した給付金は、給与額を上回るほど手厚いものだった。「解雇になったほうがよかったような空気さえ漂っていた」中で、夘木さんは「働いてもらうこと」「仕事を続けること」にこだわり続け、自らその必要性を繰り返し語ったという。

働くことを通じて心を高め、自らの内面を耕し、人格を磨いていく――。稲盛氏がもっとも大切にした「正しいこと」の実践だった。

残ってくれたスタッフらと一緒に販売機会を見つけ、工場を稼働させると、非効率な課題に気づき、改善と工夫が次々と生まれた。

結果的に2020年は売り上げが30%減った一方、経常利益は4.4%の増益決算になった。危機が去った時、その利益は迷わず、働き続けてくれた従業員に、国の給付金以上の額として分配したという。

コロナ禍も休まず走り続けた会社は、従業員との信頼関係、生産効率の両面で確実に筋力と体力をつけ、次の飛躍に必要な土台が築かれていた。

2023年5月、オランダ・ロッテルダムに同社初の欧州拠点となる製麺工場が稼働を始めた。現在、出身10カ国から16人の従業員が勤務し、EU圏内14カ国の約300店舗向けに製造出荷している。

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