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「原価1000円超」独自進化した"天然"かき氷の凄み 天然氷は日光から仕入れ、1杯手回し132回のこだわり

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 8時0分

生メロン三昧はまもなく登場。前述のつがりあんメロンが上にのっていたが、高知マルセイユ赤肉メロンを使うこともある。かき氷は圧倒的な量。一緒に麦茶もつく。

食べ方はそれぞれの好みだが、途中で味を変えて楽しめる。例えば、生メロンを食べる→かき氷を氷蜜(生メロンのシロップ)で味わう→中に入った生クリームと混ぜて食べる→器に残った分をストローで飲めばメロンジュースになる、といったように。ラーメンでもおなじみの味変は近年のトレンドだが、かき氷もそうだった。

「二郎系ラーメンが好きな男性が1人で来ることも多いです。天然のかき氷と相通じるものがあるのでしょうか。ひみつ堂を“かき氷界の二郎”と呼ぶ人もおられます」(森西店主)

取材中はほとんど女性客だったが、席に座ってからの平均滞在時間は20分ぐらい。「何度か来ていて、和栗モンブランを食べたこともあります」という女性1人客もいた。

ひみつ堂は高品質にこだわった結果、中には原価で1000円を超えるメニューもあるという。前述のメロン三昧も7月にそれまでの1900円を2100円に値上げした。

「仕入れ代金が以前の1.5倍になった果物もあります。農作物なので天候にも左右され、酷暑や長雨だと生育環境に影響が出ます、来年も同じ量が確保できる保証はありません」

こう話す森西店主は、「大きさも変わりましたが、2000円を超えるメニューになるとは思ってもいなかった。ウチで修業して開業した元スタッフも驚いています」と本音を漏らす。

外食には「ふだん使い」と「イベント使い」があると思う。イベント使いでもテーマによって納得価格は異なり、例えば縁日で食べるかき氷なら500円~800円程度が許容範囲か。市販のシロップを使わず、高級フルーツをふんだんに使う天然氷が2000円超でも売れるのは、昭和レトロな空間でのごほうび飲食として支持されるのだろう。

暖冬で天然氷も減少、冬の集客は道半ば

景気の良い話を紹介してきたが、人気を支える裏事情は大変だ。

日光から仕入れる天然氷も、暖冬で寒い時間が短くなって生産量が減り、価格も上がった。原材料を運ぶ送料も上がっている。

「年間で約20トンの天然氷を使っていますが、年間に使用する氷をすべて天然氷でまかなうことが困難になってきました。昨年の採氷数が少なかったことから2024年8月末には純氷に切り替えて営業していきます」(森西店主)

季節商品だった天然のかき氷は通年商品になっており、東京・六本木の店などは深夜営業でも客が訪れる。だが、多くの店は真冬の集客に苦戦するという。

ひみつ堂は夏季(7月~9月)以外にはグラタンもあり、人気メニューだ。夏の半分以下の来店客数で運営スタッフを調整して営業するが、1月と2月は営業赤字だという。

「それでも十数年店を続けることができ、かき氷ブームで終わらせない工夫もしてきました。店の運営は毎日変化があり、お客さんが喜んで食べてくださるとうれしいです」(同)

薄氷を履む状況もあるが、日々向き合う中に生き残りのヒントが隠されているようだ。

高井 尚之:経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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