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ドラッグ店ゲンキーが地方スーパーを倒せる理由 「売れなくても持続可能」、人口減少に強い仕組み

東洋経済オンライン / 2024年8月25日 10時0分

また、高齢化の進行で機動力が低下しつつある地方の消費者にとって、近くにあって何でもそろうこの店の利用頻度は高くなるだろう。ただ、この便利店は品ぞろえのいい大きなコンビニのような存在なので、そこまで繁盛するというわけではない。そこそこの売り上げでも維持できる構造になっていなければならない、いわゆる損益分岐点の低い店であることが求められる。ゲンキーのレギュラー店はこの点で優等生なのである。

店舗あたりの損益分岐点を計算して比較するとなるとなかなか難しいので、簡易的に、(販管費/粗利率)/店舗数で出してみる。ゲンキーは3.25億円ほどの店舗あたり損益分岐点売上になる。これはかなり優秀な店ということを示している。

売れなくても維持しやすいゲンキー

この会社が店舗展開している中部地方あたりにもあるドラッグストア、食品スーパーと比較してみると、ゲンキーは最優秀=市場縮小が進んでも最後まで存続することができる店、だということがわかるだろう。

特に、この会社が実質的に食品スーパーとしての機能を中心としていることを考えれば、食品スーパー各社より圧倒的に持続可能であるといえる。あえてもってきた、都内のコンビニサイズ(30~60坪)のミニスーパーまいばすけっと、は2.05億円と極めて低いが、ゲンキーは10倍の大きさの店であることを考えると、いかに売れなくても維持できるのかがわかるだろう。

地方での食品流通市場は人口減少とともに縮小していけば、そこに存在するスーパーは、損益分岐点が高い店から順に撤退を余儀なくされる。しかし、ここ20年の間に地方ではスーパーの競争が激化し、広い駐車場と広い売場(500~700坪ほど)に豊富な品ぞろえを備えていない店はかなり淘汰された。

そのため、今の地方郊外の食品スーパーの損益分岐点は、先ほどの図表の通り、13億円以上とかなりの売り上げが必要になっている。現在の生き残りスーパーは、人口減少が進行すると弱い順から淘汰されていく。こうした中でも、ゲンキーの便利店は最後まで生き残ることができる「食品スーパー」なのだ。

「売れなくても存続可能な店」という強み

これから、人手不足と人件費高騰に向き合わねばならない食品スーパー業界は、生鮮、惣菜に関して、店舗バックヤードでの作業を見直さざるを得なくなっている。

センター集中化して効率化を行わねば、オペレーションが回らないのだが、中小スーパーの場合、こうしたインフラ投資を行っていく余裕はないかもしれない。地場大手であったとしても、現在の損益分岐点の既存店を維持していくためには、相当のエネルギーが必要になる。

ゲンキーは、そうした様子を横目に、300坪店舗の出店を加速して、小商圏を削り取っていくことになるだろう。ずっと右肩下がり、というこれまでにない環境下での競争要因は、「売れる店」から、「売れなくても存続可能な店」に変わってきた。ゲンキーの300坪便利店は、10年以内にロードサイドの標準的ビジネスモデルとして、認知されることになる、と大胆予測しておこう。

中井 彰人:流通アナリスト

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