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表示数稼ぎの過激投稿、ネットから消えぬ根本原因 私たちの「関心」が経済的価値を持つジレンマ

東洋経済オンライン / 2024年8月26日 16時0分

誹謗中傷も、アテンション・エコノミーがつくり出している部分がある。憎悪や怒りといった表現が、人間のアテンションを得やすく、拡散・共有されやすいことはよく知られている。先述の国連文書も、「怒り(outrage)はより多くのエンゲージメントを生み出す」と述べる。

暴力的な過激投稿は「花形コンテンツ」

フェイスブックの元社員フランシス・ホーゲンが持ち出した同社の内部文書「フェイスブック文書」によれば、同社はこうした事実を理解しながらも、ユーザーのエンゲージメント獲得のため、すなわちユーザーをFacebook上に長くとどまらせるため、こうした憎悪的な表現を優先的に表示するアルゴリズムを採用し続けたという。

ホーゲンはイギリス議会の公聴会でも、議員らを前に、同社のアルゴリズムが「憎悪を増幅させていることは疑いがない」と証言した。

フェイスブック誤情報チームのプロダクトマネジャーだった彼女の発言が偽証でないならば、憎悪に満ちた誹謗中傷的投稿は、プラットフォームのアルゴリズム・AIに愛でられ、促進されている側面がある。

別言すれば、クリック=反射を奪い合う「刺激の競争」において、深いエンゲージメント(粘着性)を作出する暴力的な過激投稿は、経済的利益を生み出すために不可欠な花形コンテンツであるといえよう。

そして、アテンション・エコノミーの下でこうした刺激物を延々と見させられる私たちの精神構造の変化にも、触れないわけにはいかない。

例えば、EUの欧州委員会は、2024年2月、デジタルサービス法(Digital Services Act,DSA)に基づき、TikTokを運営するバイトダンスが自らの動画に対するユーザーの依存症リスクを把握し、対応しているかについて調査を行うと宣言したが、そこで重視されたのは、精神的な健康や、子どもの基本的人権であった。

ジャーナリストのメーガン・レイも、刺激物を浴び続けることによる慢性的ストレスがユーザーの健康に与える影響を指摘している。

確かに、インプレッション稼ぎの過激投稿や誹謗中傷、ゴシップなど、人間の浅ましい姿を四六時中見せられて、人間の精神構造が変化しないわけはないだろう。民主主義の維持には、人間存在そのものへの信頼が必要だが、アテンション・エコノミーの加速化で、人間がどんどん人間を嫌いになっているようにも思われる。

また、マイクロソフトの研究では、デジタル化の影響で、人間の注意持続時間が、集中力のないことで知られる金魚の平均的な注意持続時間(9秒)を下回ったと報告されている(注:Kevin Mcspadden, You Now Have a Shorter Attention Span Than a Goldfish, TIME, May 14, 2015)。

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