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経営者は「DXへの過大期待」を今すぐ捨てるべきだ 「効果出ない」悩む経営者に"足りない視点"は?

東洋経済オンライン / 2024年8月27日 8時0分

これらの企業はDXの戦略・企画や効果算定を精緻に定義・算定しています。基幹系システムの刷新やデータ活用の仕組みを構築し、さまざまな業務効率化のツールも導入してきています。

さらに、アプリ開発チームの内製化や、従業員のデジタル知見向上のためのリスキリングなどに取り組んでいる企業も珍しくありません。

しかし、いち早くDXを推進してきたにもかかわらず、いまだに「目に見える効果」が出ていない企業が多いという現状があります。すでに数百億円を超える投資をしている企業も多く、その悩みは深刻です。

なぜ「守りのDX」の効果を享受できていないのでしょうか。

それを読み解くには「業務効率化によるコスト削減の効果算定」を理解しておく必要があります。

「DX効果算定」のまやかし、その実態は?

業務効率化によるコスト削減の効果算定といっても、実はそれほど難しいものではありません。

みなさんも、「年間100万時間(500人分)の業務効率化を実現」「50億円相当のコスト削減を達成」などといった記事をよく目にすることがあるでしょう。これらの数字は、次のような数式で導き出すことができます。

守りのDXによる削減時間=ある業務1件あたりの削減時間 × その業務の処理件数

たとえば、伝票ひとつの処理時間を10分削減し、対象となる伝票が月に1万件だった場合は、

10分/伝票 × 1万(伝票数) × 12(カ月) ÷ 60(分)=2万時間分(の削減)

といった具合に1カ月分の削減時間が弾き出せます。

こうして、対象となる全業務分を積み上げた数字が、「守りのDX」による効果、つまり「総削減時間」ということになります。

この時間を年間の稼働時間の2000時間(250日×8時間)で割れば「何人分」の数値となります。その数値に1人当たりの雇用コストを掛ければ「コスト削減額」となります。

しかしこの算定は、しばしば意思決定をミスリードすることがあります。

例えば「年間100万時間(500人分)の業務効率化を実現」は、大手金融機関の実際のケースです。

100万時間はたしかに大きな数字でしょう。ただし、ここでひとつ注意が必要なのは、この大手金融機関は「4万人の従業員を擁している」という点です。

つまり、年間の100万時間を4万人で割り、さらに年間稼働日250日で割ると、「1人当たり1日わずか6分の削減」……ということになります。

現実問題として、「6分の効率化」は誤差の範囲内で、日々の業務が著しく効率化できるわけではありません。

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