「虎に翼」LGBTQ描写に反発する人に言いたいこと 性的マイノリティを描くことは今や世界的潮流
東洋経済オンライン / 2024年8月27日 10時30分
一方で、受け手によっても受け取り方が違ってきてしまうのは当然のことでもある。NHK、さらには視聴者の数や層も広がる朝ドラの枠で放送される以上は、作り手のバランス感覚がより必要になってくる。公共放送であるNHKが取り上げることの重みや、それによって纏う“正しさ”も、反発の一因になるだろう。
もちろん、ドラマに限らず、社会の中でマイノリティとして生きている人びとにスポットライトを当てるのは公共放送の担うべき役割であり意義だ。だが、ドラマという物語の中で浮いていたり、“押し付け”が強すぎたりしても視聴者は反発する。
筆者としては、轟とパートナーのエピソードは、籍を入れられる状況にあるのにそれに抵抗がある寅子たちと、籍を入れたくても入れることのできない轟たちという対比が生まれるという点で、物語を深めるために必要なものだったと思う。
『虎に翼』でバランスが傾いたシーン
だが、103回で、当事者たちが集まり寅子たちと会話するシーンには付け加えの印象があったし、バランスが傾いた感覚があった。特に、寅子の娘・優未に「私、知らなかった。手術すれば女の人から男になれるんだね」と言わせるなど、進行役のようなポジションを担わせているのが気になった。
大人にはできない純粋なリアクションや質問を子どもにさせることで情報を提供しようとするのは、まるでNHKの『突撃!カネオくん』や『チコちゃんに叱られる!』のような教養バラエティ番組や、Eテレの番組を思わせるような作りだった。
それに対する「優未ちゃんは女の人になるために何か頑張ったことってある?」という当事者からの台詞も、子どもにぶつけるには強すぎるし、“普通に生きられている人”への攻撃性を持ちすぎていて、視聴者の反発を喚起してしまうようにも感じた。
マジョリティの人びとの意識を変革することは必要だし、このドラマの役割でもあると思うが、それが攻撃になってしまっては逆効果なのではないだろうか。
物語が面白いうえで、観る側の価値観が少しずつ変わっていくような作品は必要だと感じている。だが、メッセージが強すぎて、物語の進行や面白さを崩すようなことがあれば、届くべきメッセージも届かなくなってしまうだろう。
もちろん、それは難しいことではあるものの、その絶妙なバランスの上に成立する作品は紛れもない傑作だし『虎に翼』はそうあり続ける強度と優しさを持った作品だと信じている。
霜田 明寛:ライター/「チェリー」編集長
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