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「世界大戦リスク」がこうも高まってきた背景事情 どの国境、どこの地域が舞台でもおかしくない

東洋経済オンライン / 2024年8月28日 18時0分

実際のところ、プーチン大統領に働きかけた最大の外交努力は、むしろ侵攻を奨励する形になってしまった。侵攻が3週間後に迫った2022年2月4日、プーチン大統領と中国の習近平国家主席は北京で会談した。両国が調印した共同声明には、次のように書かれている。「共通の隣接地域において、安全と安定を損なおうとする外的勢力に立ちむかい、あらゆる理由をつけて行なわれる主権国家の内政干渉に対抗する」。

つまりロシアと中国は、国境を接する周辺諸国までを自国の勢力圏と見なし、その「安全と安定」を勝手に定義して、他国に干渉する意図を明言しているのである。

この共同声明もまた、西側への抑止効果を意図したものだ。世界最強の核保有国のうち2つが手をたずさえることが見てとれる。さらに、西側の主導体制や国際法解釈に反発を覚え、中国やロシアの後ろ盾がほしい国々に結集を呼びかける役目も果たしている。

共同声明は、中露の戦略的パートナーシップに「制約はない」とうたっている。たとえそれが軍事同盟の形を取らないとしても、西側の抑止戦略が直面する壁はいっそう高くなった。

その理由は単純明快だ。中露戦略的パートナーシップから明らかなように、いまや大国の競争はどの国境、どこの地域が舞台になってもおかしくない。2022年6月、シンガポールで開かれた国際戦略研究所のシャングリラ対話で、開会の辞を述べた日本の岸田文雄首相は「今日のウクライナは明日の東アジア」だと表現した。地域の悲劇が別の場所で繰りかえされるだけでなく、欧州と東アジアがひとつの戦略的空間としてつながっているという意味だろう。

そして東アジア、なかでも台湾をめぐって紛争が起きる可能性は、ウクライナよりも高い。それは米中という世界の二大国家が直接対決する戦争に発展し、ほかの強国もたちまち引きずりこまれて、最後は核兵器が使用されることになる。まさに「第3次世界大戦」と呼ぶにふさわしい紛争になるだろう。

なぜ台湾はリスクが高いのか

2021年から2022年にかけて、台湾とウクライナのリスクの差を鮮明にしたのは米国のジョー・バイデン大統領だった。ロシアと戦うことが「第3次世界大戦の始まりになる」といって、米軍あるいはNATO軍をウクライナに派遣する可能性を慎重に排除したのだ。しかし2021年10月と2022年5月には、もし中国が力で台湾の支配を試みるならば、米軍は直接介入して阻止すると表明した。2022年にも同様の発言を二度繰りかえしている。

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