「世界大戦リスク」がこうも高まってきた背景事情 どの国境、どこの地域が舞台でもおかしくない
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 18時0分
ホワイトハウスと国務省はそのたびに、1972年の米中共同声明での台湾の扱い、すなわ「ひとつの中国」とする政策に変わりはないと「釈明」に追われた。米国は台湾の帰属を力で決定することには反対しつつも、台湾はどうあるべきかの判断はあえて避けてきた。
バイデン発言は、少なくとも自分が大統領であるあいだは、武力行使に軍事介入で対抗するという明確な意思表示だ。欧州では、ロシアと戦闘状態になって「第3次世界大戦を始める」つもりはない。けれどもアジアでは、台湾をめぐって中国と衝突し、第3次世界大戦を始めるつもりがあるということである。
同じ発言を4度も繰りかえしたバイデン大統領は、台湾の立場について「戦略的あいまいさ」を保ってきた米国の方針を、「戦略的明確さ」に切りかえようとしている。米国の鮮明な態度が、台湾独立の刺激になることも恐れていない。こうでもしておかないと、中国の台湾侵攻の恐怖が現実になるかもしれないのだ。
この姿勢に偽りがなく、その後の大統領も踏襲するとしたら、もう空母を派遣するどころの話ではなくなる。1996年、台湾をめぐって米中関係が緊張したとき、当時のビル・クリントン大統領は台湾海峡に空母を二隻派遣して中国に警告した。だがこれからは、世界最大の軍事力を誇る国と、世界第2位の軍事力を持つ国が、全面戦争に突入する事態も起こりうる。米国は1945年に広島と長崎に原子爆弾を投下して以来、初めて核兵器を使用する事態も想定しているだろう。
ビル・エモット:英『エコノミスト』元編集長
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