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福岡発の「草刈機まさお」が売れに売れる背景 義理人情の「ユニーク戦略」で54カ国に進出

東洋経済オンライン / 2024年8月29日 9時30分

現場や人に合わせて、細やかにカスタマイズするのもキャニコムならではのスタイルだ。

例えば、背が高い欧米ユーザー向けにハンドルを10cm高くしたり、農園が広大なアメリカでは膝を痛めやすいと聞けば、ペダルを踏まずに手で操作できるシフトレバーにしたり。

「お客さんごとの要望に応えるうちに、同じ製品でもちょっと違う種類がどんどん増えました。例を挙げると、しいたけ原木の運搬車、静岡の三ヶ日みかん専用の運搬車もある。公道で走れる運搬車を、離島で使う消防車にカスタムしたこともあります。たとえ数台でも頼まれるのはありがたくて、うれしいですから」

たった1人のお客さんのために、心から喜ばれる製品をお届けする。これぞまさに「義理と人情」のものづくりといえる。

そして、技術力の高さも支持される理由の1つ。例えば、世界でいちばん遅く走る運搬車はキャニコム製だ。

「エンストせずに時速0.25kmで進むためには、高度な技術が必要です。社内に開発チームがあり、高専を卒業したばかりの若手から60代の社員まで集まって、ワイワイガヤガヤと知恵を絞り技術を磨いています。どんなニーズでも面白がって、真摯に応えてくれる社員がいるからこそ、こだわったものづくりを続けられるのです」

現社長の良光さんは、3代目。もともと会社の後を継ぐ気はなかったという。

「親父は赤いジャケットがトレードマークで、地元の田舎では知られた会社。僕が子どもの頃にコンビニで買い食いしただけで、誰かが厳格なうちの親に言いつけて、こっぴどく叱られたり……何かと肩身の狭い思いをしました」と打ち明ける。

逃げるように東京の大学に進学し、卒業後はしばらくフラフラしていたが、縁のあったホームセンターで働き始めた。「肥料を農家に配達すると、キャニコムの製品が現場で愛用されていて、ちょっとだけ誇らしくなりました」

2年後のある日、父親から良光さんにかかってきた電話が転機となる。「『今の給料より月3万円高く払うから、うちに帰ってこんか』と。つい、お金につられて帰ることにしました」。

2004年、24歳でキャニコムに入社。しかし、突然やってきた後継ぎ候補は社内に居場所を見つけられず、つらくてひとり泣いた日も……。

海外売り上げは50%を超えた

数カ月後、良光さんは「アメリカで本格展開」というミッションを受け、単身渡米した。「とにかく現場に飛び込み、アメリカの現場を見て話を聞いて、ニーズをつかもうと毎日必死でした」。

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