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福岡発の「草刈機まさお」が売れに売れる背景 義理人情の「ユニーク戦略」で54カ国に進出

東洋経済オンライン / 2024年8月29日 9時30分

アメリカでもキャニコム流を貫き、ボヤキをもとに製品を改良すると、少しずつ売れるように。北米事業を軌道に乗せ、2010年に帰国した。ボヤキズムは海外でも通用したのだ。

良光さんは2015年に社長に就任すると、「高付加価値化」と「グローバル」を打ち出した。

「前体制では、大量生産で安い製品を出していく戦略を描いていましたが、それでは本来のキャニコムらしさが失われて疲弊してしまう……。自分たちの力を信じて従来の高付加価値路線に戻し、グローバルにも改めて力を入れることにしました」

結果として、社長就任時に49億円まで落ち込んでいた売上高は右肩上がりで、2023年に100億円を突破。良光さんが入社時は全体の5%ほどだった海外の売り上げは50%を超えた。

アメリカを皮切りに韓国と中国、カナダ、タイに子会社を置き、近年は特にアメリカとオセアニア、アジアが好調だという。

社長になった今でも、自ら海外を飛び回り、お客さんのボヤキやニーズを敏感にキャッチする。わざわざ海外に行く目的は、ほかにもある。

「海外の取引先は同族経営が多く、祖父から代々の付き合いで、顔を見せに来て、と言われるんですよ。一緒にご飯を食べてお酒を飲んで、同族経営ならではの話をすることも多い。うちではこんなときに親が出てくるけど、そっちはどうかとか」。同族経営の仲間として、本音で話すことも楽しみとなっている。

もともと会社を継ぐ気はなかったものの、「今は会社が好きで、ここで働くことが楽しくてたまらない。動けば動くほど結果が出て、やりがいがある」と良光さん。

「社長になる前は、うちの会社はなんでこんなこともできないのかと心の中で毒づくこともあったけれど、今はそれがうちの会社だと受け止められる。環境や人のせいにせず、自分ができることをとことんやりたい。僕は歯車のひとつとして、会社がうまく回るように社員とコミュニケーションを取るように心がけています」

その言葉通り、300人近い社員への心遣いは細やかだ。全社員の顔と名前を覚えていて、社内で会えば声をかける。

アメリカ法人のスタッフには、全員に手書きでクリスマスカードを書き、スターバックスのチケットと共に送るのも毎年恒例だ。ミャンマーやカンボジアから来た技能実習生たちには「嫌がらせ」と照れを隠して、カップラーメンやビールを大量に差し入れしている。

福岡の中小企業でも、世界に通用する

目標としていた売り上げ100億円を達成した今、次にどんな目標を掲げるのか。

「親父は、次は200億円なんて豪語してますが、実はそれも夢じゃないと思えるんです。もっと1人ひとりが自分で考えて動ける組織になり、会社が強くなれば。福岡の地方で生まれた中小企業でも、世界で通用することを示して、夢を持ってチャレンジする人たちに勇気を与えられたらいいですね」

義理と人情、ユニークなネーミング、ボヤキズム……独自の戦略でわが道を突き進むキャニコムの快進撃は、まだまだ続きそうだ。

佐々木 恵美:フリーライター・エディター

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