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「就労での重訪が認められない」重度障害者の嘆き 厚労省が「個人の経済活動を利する」と拒む現状

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 9時0分

「介助付き就労」の学習会で自身の体験を語る小暮さん(記者撮影)

障害者の法定雇用率が今年4月に2.5%へ引き上げられ、企業は従業員40人ごとに障害者1人を雇う義務を負った。軽度の身体障害など比較的雇いやすい区分の求職者をめぐり、事業者間で争奪戦となっている。

【写真】れいわ新選組の天畠大輔参議院議員は、四肢マヒなどを抱えるが介助付きで公務をこなす

そのような中、就労のスタートラインにすら立てない人たちがいる。日常生活に他者の助けを必要とする重度障害者だ。働く意欲や能力はあるのに、働けない――。そんな当事者の状況を追った。

「ヘルパー使えないの? じゃあ就職なんて無理でしょ」

大阪府吹田市の小暮理佳さんは、父親の一言に唖然とした。関西大学4年生だった2018年12月、うまくいかない就職活動について何気なく家庭で話した際のことだ。すでに折れていた心に追い打ちとなった。

就労時の介助費用は自己負担

小暮さんは2歳のとき、脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された。全身の筋力が徐々に衰える進行性の難病で、根本的な治療法はまだ存在しない。手先は動かせるが、下半身の自由が利かず、移動は電動車いす。人工呼吸器も使用している。

その生活を支えているのが、「重度訪問介護(重訪)」だ。名称から介護保険と混同されがちだが、別物で障害福祉サービスの一種。自治体が認めた時間に応じてヘルパーの派遣を受けられ、食事や入浴、排泄、日常生活上の外出などに介助サービスが利用できる。

ただ、重訪には大きな制約がある。管轄する厚生労働省が経済活動での利用を認めておらず、就労中は支給されないのだ。つまり、重度障害者が働こうとすれば、ヘルパー代を自身か企業で負担しなければならない。小暮さんは「試算すると、月40万円ほどかかる」と話す。

一般企業に入るハードルの高さは理解していた。それでも「自分でお金を稼ぎ、好きなものに囲まれて暮らす」という夢を諦めることなく、周囲の友人たちと同じように就活に励んだ。神奈川の大手IT企業で2週間のインターンをやり遂げるなど、手応えもあった。

だが、障害者雇用枠を中心に応募した約10社は全滅。介助の必要性を告げると、まともに選考してくれない会社が多かった。障害を抱える学生向けの合同説明会では、「自力でトイレに行けるようになってから応募してください」と門前払いされた経験もある。

小暮さんは「重度障害者の中には、体の状態的にどうしても働けない人もいる。ただ、意欲がある人の道まで閉ざさないでほしい」と訴える。

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