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今こそ「世阿弥」現代人が共感する600年前の言葉 未来への不安に「答え」を見出すヒントがある

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 16時0分

権力者が弱者である曲や、いかつい武士が装束や能面により女性を演じるなど、立場の違うものになりきるという行為が教養として行われていました。

莫大な予算で、面、装束を作り「見る」ものから「する」ものに変化していった日本的美意識も海外から注目されています。

これらの発想の源となる父観阿弥からの伝承、世阿弥自身の体験から書き残したこと、次男元能が世阿弥からの教えを書き残したものが数多く伝承されています。

世阿弥が示す未来への指針

コロナ禍が終わりAI時代が本格化してきました。レジや接客、作曲などマニュアルに沿ってできる仕事はどんどん機械化が進んでいます。最近では ChatGPT が誕生し、「人間がする仕事は何か?」という話題が普通に会話に登場するようになってきました。

そんな未来に対する不安の多い昨今、答えを見出すヒントが世阿弥の言葉にはあるのではないでしょうか。未来に対する不安は何千年も前からある人類の悩みの一つです。

日本の伝統文化を次世代に残したいという方も増えているものの、最先端だった 「能楽」は「難しい」「敷居が高い」などが合言葉のようになっています。

未来に負債を残すことと、託すことは大きく違います。次世代に伝統文化を伝えるためには現代の同世代の人が興味を持つことが第一の解決法だと私は考えています。

ところが次世代に残したいと思う方々も、いざ能楽堂に足を運ぶだけでもなかなか実行に移せないものです。

そうしたなか『風姿花伝』が経営哲学、生き方の指針として語られることも増えてきました。またNTTで開発されたLLM(大規模言語モデル)が日本独自の「tsuzumi」と名付けられています。

大ベストセラーとなった『国家の品格』にも国際人とは外国語を話せる人のことではなく、自国の文化を知る人のことだという記述があります。

世阿弥の言葉には、見聞心(視覚、聴覚、体感覚)など、NLP(Neuro Linguistic Programming:「神経言語プログラミング」)を始めとする海外の最新心理学とも共通する部分が多いのも特徴です。

原文が日本にあり、実際にその哲学を土台に600年間途切れることなく上演されている能楽は世界最古の生きた文化です。600年後の私たちに残してくれた世阿弥の哲学や世界観を知ることは、バーチャルとリアルが交錯する現代人の大きな生きる力になると考えます。

とくに人の心に関することはタイムトラベルで現代を見てから記載したのではないかと思われるほど、現代の自己啓発書に通じるところがあります。これが秘伝として伝承されてきたこと、それが公開されているにもかかわらず古語であるために敬遠されているのは非常にもったいない状況だと思っています。

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