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今こそ「世阿弥」現代人が共感する600年前の言葉 未来への不安に「答え」を見出すヒントがある

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 16時0分

能楽は室町時代に現代の様式になったと言われています。その中でも南北朝時代という日本国内が混乱している時代に現代の能の原型ができました。

観阿弥は南北朝時代の始まりに生まれました。その30年後、世阿弥が生まれています。混乱の時代を生きただけでなく、その後の時代の権力者のフィルターを通り抜けても残ってきた生命力が強い作品だけが200曲以上残っています。

世阿弥の作品も地震や自然災害を象徴する神や龍神の出現、幽霊が思いを語るものなど幽玄の世界に進んでいきます。

また仏教が盛んになり、神道と仏教が入り交じるスピリチュアルな活動が盛んな国家に日本が変化してきたのもこの時代です。

現代ではビジネスや自己啓発に関する講演で宇宙意識など見えない世界が語られることが普通になってきました。数年前に西洋占星術で語られる「地の時代」から「風の時代」へというキーワードも話題になりました。物質から情報の時代へと変化するという意味です。

世阿弥の時代から見れば、「地の時代」は平家の時代まで、その後の鎌倉時代以降が「風の時代」であると言えます。その「風の時代」の終盤に活躍した能楽師が世阿弥です。著書の中に 「風」というキーワードが多用されるのも現代へと贈られた言葉のように感じられます。

本記事をきっかけに世阿弥の原文に興味を持った方はぜひ原文にも触れてみてください。新しい発想、視点の変わるきっかけとなれば幸いです。

道を極めた世阿弥の教えを現代に

世阿弥『風姿花伝』より2つの超訳を紹介します。

努力は人に認められる

どんなに人気のあるベテランでも、周りから受け入れてもらうための努力をしている。そうでなければ、いくら技術を磨き評価を受けたところで、長続きはしないだろう。

長年努力を怠らないベテランは、たとえ肉体的には衰えてきたとしても変わらぬ人気を誇る。人気があるということは、目を引く面白さがあるということだ。長年人気を保ち続けている人には、どんな有望な若者でも勝つことはないだろう。

勝負を左右するもの

タイミングには恐ろしい力がある。昨年は大人気だった人が今年はさっぱりということもある。どんなに準備をしても良い時もあれば悪い時もある。この因果は、私たちにはどうすることもできない。

だからこそ、この事実を受け入れ、不調の時には実力以上に見せようとせず、相手より評価が悪かったとしても気にせずに余裕を持ち、できるところを確実に演じ続ける。

期待外れだと思われるかもしれないが、一番重要な場面で、しっかりと全力を発揮すれば十分挽回はできる。調子が悪いタイミングにも使い方があるのだ。

世阿弥 Zeami(1363 ? - 1443?)
室町時代の能楽師。父の観阿弥とともに能楽を大成し、多くの書を残す。なかでも『風姿花伝』は名著として評価が高い。観阿弥と世阿弥の能はその後も受け継がれ、世阿弥の多くの作品は現在も上演され続けている。

森澤 勇司:能楽師 小鼓方

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