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一定以上の円高はない前提の「カジノ経済」の末路 株価暴落前の前提はついに崩壊してしまった

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 11時0分

日本の銀行は極めて効率の悪い資金運用をしているように思える。しかしそれは、リスクを取らないために、必要なことなのだ(写真:artswai/PIXTA)

7月末の暴落以前の株価は、為替レートが1ドル=153円程度以上に円高にならないことに賭けた「カジノ経済」だった。これがいま崩壊しつつある。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第128回。

円キャリー取引は、巨額の利益をもたらす

この数年間の間に、急速な円安が進んだ。これを引き起こしたのは、円キャリー取引だ。

円キャリー取引は、円を借りて資金を調達し、それをドルに変換する。ドル資産の金利が高く、日本円での調達金利が低いので、金利差に相当するだけの利益を上げられる。この取引は、円を売ってドルを購入するため、円安の原因となる。海外のヘッジファンドなどが行ったとされる。

日米金利差を2年国債利回りで評価すれば、年率で4.5%程度になる。この金利差は、日本国内における銀行の利ザヤと比べると、非常に大きい。三菱UFJ銀行の2023年度決算説明資料によると、銀行単体での利ザヤは0.75%だった。これと比べると、日米間金利差が4.5%というのは、6倍もの大きさだ。

メガバンク平均で見ても同様だ。預金と貸出金の利回り差は、2020年3月期以来4年ぶりの高水準になったとはいうものの、0.78%だった。

以上の数字を見ると、日本の銀行は極めて効率の悪い資金運用をしているように思える。しかしそれは、リスクを取らないために、必要なことなのだ。これを「まともな世界」と考えると、円キャリーが生み出したのは、それとは異質の世界だった。それが、ここ数年の日本経済を引っ張ったのだ。

では、円キャリー取引は、どの程度の規模だったのか? これについては、さまざまな推計があり、推計額には大きな差があるのだが、1つの目安になるのは、「緩和への慢心、市場揺らす」(2024年8月14日、日本経済新聞)という記事の中で、筆者のジリアン・テットが、次のように述べていることだ。

「国際決済銀行(BIS)は、国境を越えた円建ての借り入れが21年の終盤以降に7420億ドル(約109兆円)増加したと報告している。また、スイスの大手銀行UBSは、今年、5000億ドル前後のキャリートレード累積投資残高があったと推計している。」

約109兆円という残高は、極めて巨額だ。前述した三菱UFJ銀行2023年度決算説明資料によると、銀行単体での預金平残は189兆円だ。109兆円は、この半分以上になる。

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