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一定以上の円高はない前提の「カジノ経済」の末路 株価暴落前の前提はついに崩壊してしまった

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 11時0分

これが仮に金利差4.5%程度で運用されたとすれば1年間で5兆円を超える利益をもたらしたことになるだろう。

「1ドル=153円以上にならない」ことに賭けたカジノ経済

円キャリー取引は、一見すると、契約時に確定してしまう金利差という条件で利益が決まるリスクのない取引(こうしたものを「裁定取引」という)のように見える。しかし、実はそうではなく、契約終了時の為替レートという不確実な条件に依存した、きわめてリスクの高い取引なのである。

この取引が利益を生むためには、将来の為替レートが一定値以上に円高にならないことが必要だ。なぜかを説明しよう。

今年の7月初め頃、為替レートが1ドル=約160円であった頃を考えよう。日本円で160万円を借りて1万ドルに変換し、それをアメリカの資産に投資したとしよう。

この利回りが4.5%だったとすると、1万ドル投資すれば、1年後に10,450ドルになる。他方、1年後の為替レートが1ドル= e円であるとしよう。すると、これを円にすれば、10,450e円になる。 

簡単化のため、日本円での借入金利をゼロとすれば、これが借入額160万円を上回る条件(円キャリーが利益をもたらす条件)は、10,450e>1,600,000、つまり、e>153だ。

つまり、この取引は、「1年後の為替レートが1ドル= 153円より円高にならない」ことに賭けた投機なのである。

「1ドル=153円以上に円高にならない」というのは、いまにして思えば、ずいぶん強気な投機だ。

現実の為替レートはすでにこれより円高になってしまっているから、この取引を来年の7月まで持ち続けていれば、損失を被る危険性が高い。だから、いまのうちに取引を手じまってしまおうということになる。

これを「円キャリーの巻き戻し」と言う。円キャリーが巻き戻されると、ドルが売られ円が買われるので、為替レートは円高になる。そしてそれがさらに円キャリーの巻き戻しを呼び、さらに円高を招く。

実際の円キャリー取引の巻き戻しの実態についても、さまざまな推計があり、はっきりしたことはわからないのだが、すでにかなりの巻き戻しが起きていることは間違いないようだ。

リスク感覚が麻痺したミセス・ワタナベ

上で述べた条件は、より一般化できる。結論だけを述べると、日米金利差を4.5%とすれば、取引を始めたときの為替レートが1ドル=g円であれば、「1年後の為替レートが1ドル=0.956gより円高にならない」ことが円キャリーが利益をもたらす条件である。

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