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一定以上の円高はない前提の「カジノ経済」の末路 株価暴落前の前提はついに崩壊してしまった

東洋経済オンライン / 2024年9月1日 11時0分

しかし、為替レートが5%程度変化するのは、大いにありうることだ。そして、プロの集団であるヘッジファンドは、当然それを意識している。

ところが、一般の人々が行う取引では、この条件が正しく意識されているとは限らない。そして、一般の個人であっても、円キャリー取引と同じことが簡単にできるのである。それは、FX取引(証拠金外国為替取引)において、スワップ取引を行うことだ。これは、円を売ってドルを買う取引だ。そして金利差に相当する額をスワップポイントとして受け取る。

この場合も、利益が出るためには先に述べた条件が必要だ。ところが。実際には、こうしたことが意識されていなかった可能性がある。

実際、「ポイント取引によって生活費を稼げる」などと言われたこともある。しかし、前記の条件が満たされなければ、取引を終了するときに巨額の評価減が発生し、それまでのポイントは一切帳消しになってしまう危険があるのだ。

今回の円安過程において、こした取引が実際に行われたかどうかは明らかでないのだが、2007年頃の円安進行時においては、個人によるスワップ取引が盛んに行われた。これは「ミセス・ワタナベ」として世界的に有名になったものだ。

7月初めごろの株価水準に戻るのは容易ではない

カジノ経済とは、このように、プロの取引者だけではなく、リスク感覚が麻痺してしまった一般人をも巻き込んで、進行していく。

そして、円安が進むと、企業利益が増大するので、株価が上昇する。

ところが、円キャリーに支えられた為替レートは、非常にボラティリティの高いものであり、そして株価は円安によって支えられたものだったので、やはりボラティリティの高いものだった。

問題は、このことを認識せずに株式投資を始めた人が多かったのではないかと考えられることだ。以上で述べたようなリスクは、投資家には十分に伝えられていなかった。そのリスクが、7月末から8月初めにかけての株価大暴落で顕在化したのだ。

以上の見方が正しければ、7月初めごろの株価水準に戻るのは容易でないということになる。

野口 悠紀雄:一橋大学名誉教授

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