ホンダが「今あえてマニュアル車」にこだわる意味 MT専用グレード「シビックRS」の仕上がりは?
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 8時0分
シビック1200RSが誕生した当時は、大気汚染が社会問題化しはじめたころ。そんな中でレーシングやスポーツをうたうのをはばかって、苦しまぎれに考えついたのがロードセーリングだと思っていた。
しかし、今のホンダにおいて、「タイプR」がサーキット走行までを視野に入れた本格派のスポーツモデルで、RSは世間一般でいうGT(グランツーリスモ)ぐらいの位置づけのようだ。
「RSはロードスポーツを楽しんでいただくための象徴的なブランド」。開発を担当した四輪開発センターLPL室LPL(ラージプロジェクトリーダー)の明本禧洙(よしあき)チーフエンジニアは、新型シビックRSのネーミングの背景をこのように“解題”してくれた。
ロードスポーツとは、筆者の解釈では一般道でドライブが楽しめるモデル。「タイプRは究極のMTモデルで、その下に気楽に運転が楽しめるMTモデルがあっていいのでは、と思っていましたし、ユーザーもそこを評価してくださっていました」と明本チーフエンジニア。
これまで「EX」「LX」グレードにマニュアル変速機を用意していたが、今回のシビックRSはそれらと入れ替えになるそうだ。
なぜ、“入れ替え”なのか。明本チーフエンジニアに尋ねると、従来のMTモデルは「スポーティさが不足している、と不満に思っているユーザーがいらっしゃった」という。
シビックRSの開発陣がしたことは、トランスミッションを中心に、スポーティなフィーリングをより強くするためのファイン(細かな)チューニング。
セダンでMT。SUVはやりのいまのトレンドとは180度対極にあるような設定だけれど、クルマ好きとしては「MTで楽しみたい」という傾向はうれしい。それに応えるホンダの姿勢も、おおいに評価したい。
エンジンとトランスミッションの間にあるフライホイール(はずみグルマ)をシングルマスの軽量タイプにして、慣性を30%落としたことがひとつ。これでエンジンが軽やかに回るようになる。
トランスミッションでは、もうひとつ大きな変更がある。「レブマッチシステム」の採用だ。
MT車のスポーツドライビングに欠かせない“ヒール&トー”をせずとも、ドライバーがシフト操作するだけで、適切なエンジン回転数を算出し自動制御で回転あわせをしてくれる。トヨタのGRモデルに用意される「i-MT」のようなシステムだ。
シフトアップ時にクラッチをつなぐのが遅れても、エンジン回転数が低下しないようにしながら上段ギアにシンクロ、というのもしてくれる。さらに、1速から3速、5速から2速といった操作も適切に制御する。
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