アメリカで内戦起きる?不安渦巻く恐ろしい光景 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』製作背景
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 12時0分
だがその道筋で彼らが目撃したのは内戦の恐怖と狂気が支配する世界だった。誰が敵で、味方なのかもわからず、ただ目の前の敵を撃ち殺す。平穏な日常は失われ、荒廃した景色が広がっていた。
旅の途中で彼らは、民間人の遺体を処理する残虐な武装集団と遭遇する。そこにいた男(ジェシー・プレモンス)は、報道陣であろうが容赦なく銃を突きつけてきて、引き金を引くことに躊躇はない。
命の危険を感じたジョエルは「これは何かの間違いだ。俺たちは“同じアメリカ人”じゃないか」と説得を試みるが、男は「オーケー、お前が言うアメリカ人ってのは“どの種類のアメリカ人”なんだ?」と問いかける――。果たして彼らはこの分断が進む戦場を無事に生き抜いて、大統領への単独インタビューをスクープすることができるのだろうか?
「ありえるかもしれない未来」を描く
本作の監督・脚本を務めたのはイギリスの鬼才アレックス・ガーランド。小説家としてキャリアをスタートした彼は、小説「ザ・ビーチ」がレオナルド・ディカプリオ主演で映画化された。その後は脚本家に転向し、『28日後...』『わたしを離さないで』など数多くの作品を手掛けた。
そして2015年の『エクス・マキナ』で監督デビューを果たすと、『アナイアレイション-全滅領域-』『MEN 同じ顔の男たち』など独創的な世界観の作品を次々と発表してきた。
ガーランド監督が本作の脚本を書き始めたのは2020年。コロナ禍のまっただ中だった。それまでの日常が一変し、世界が混沌としていく中で「世界の分断が明確化されている」ように感じたというガーランド監督は、怒りと不安、恐怖が入り交じった状態の中で脚本を書き続け、「脚本を書く中で感じたフラストレーションは収まるどころか、次第に大きくなっていった」。そこから生まれたものは架空の物語ではあるが、“ありえるかもしれない未来”としてわれわれに警鐘を鳴らしている。
劇中で戦場カメラマンとして登場するリー・スミスと、ジェシー・カレンという名前は、ガーランド監督が尊敬するふたりの戦場カメラマン、リー・ミラーと、ドン・マッカランにちなんで名付けられた。
ちなみに余談だが、このふたりを題材とした映画が今後予定されていて、ひとつはリー・ミラーを題材としたケイト・ウィンスレット主演の伝記映画『Lee(原題)』で、今年9月にアメリカやヨーロッパなどで劇場公開予定。
もう一本はドン・マッカランを題材とした伝記映画『Unreasonable Behaviour(原題)』で、女優のアンジェリーナ・ジョリーがメガホンをとることがアナウンスされている。
アメリカ国内では物議も醸した
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