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アメリカで内戦起きる?不安渦巻く恐ろしい光景 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』製作背景

東洋経済オンライン / 2024年9月2日 12時0分

くしくも11月のアメリカ大統領選にトランプ前大統領が共和党からの出馬を表明。かつて2021年1月6日にはトランプ支持者によるアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件が起きたが、もし第2期トランプ政権が実現した場合、任期終了後もアメリカ憲法修正第22条を順守せずにその権力の座に居座るのではないかという懸念を抱く人たちもいる。

またウクライナや、パレスチナ自治区ガザ地区などで起きている戦争も、アメリカの動向が大きなカギを握っているが、いずれも終息の気配は見出せず。世界の分断はさらに進んでいる。そんなタイミングもあり、11月に大統領選挙を控えるアメリカ国内では、本作の内容が物議を醸した。

とはいえ、本作はトランプ前大統領をはじめとした特定の誰かを想定して描いているわけではなく、むしろその描き方において、イデオロギー色は極力排除されている。

劇中では、テキサス州とカリフォルニア州が手を組んで大統領に反旗をひるがえすという設定となっているが、保守的な共和党支持者が多数を占めるテキサス州と、リベラルな民主党支持者が多数を占めるカリフォルニア州が手を組むというのは、なかなかありえない状況ではある。

だが海外メディアのインタビューで「この映画で大切なのは、政治的に相違のある州が手を組んで、ファシズム的な大統領に、意義を唱えたということだ。右とか左とか偏った思考は会話を拒絶してしまう。それが分断の問題だ」と語っていたガーランド監督。

これは決してアメリカだけに限られた特定の物語ではなく、世界各国どこででも起きる可能性があるような描き方になっている。

実際、アメリカ公開時に行われた出口調査では、チケットを買った人たちの中で保守派、リベラル派の割合は半々。レッドステート(共和党支持者が多い州)、ブルーステート(民主党支持者が多い州)ともに本作の興行が好調であった、とも報じられていた。

政治風刺漫画家である父を持ち、その友人のジャーナリストに囲まれて成長してきたというガーランド監督は、ジャーナリストを題材とした映画をつくりたいと思ってきたが、友人の映画製作者からは「やめとけ、ジャーナリストは嫌われてるぞ」と止められたという。

だが「人間にとって医者が必要であるのと同じように、政治を暴走させないためにもジャーナリストは必要だ」と語るガーランド監督。

腐敗した政治家によってジャーナリズムが矮小化されていることに対する憂慮もあったようで、「強い偏向報道を行う報道機関があった場合、その報道機関は一部の人にしか信頼されず、他の人からは不信感を抱かれるだろう。だがかつてのジャーナリストたちはそれを意図的に排除するようにしてきた。そしてこの映画はそうした古いタイプのジャーナリズムへの回帰である」とインタビューで語っている。

戦場に放り込まれたかのような臨場感

ガーランド監督は本作を、生々しい恐怖を抱かせる明確な反戦映画にしたかったという。その効果をもたらす要因のひとつとして、迫力ある音響デザインが挙げられる。

「可能な限り強烈な閃光と発射音が出る空砲をつかった」というガーランド監督。そのことがもたらす銃の音の大きさ、気圧の変化などによって、まるで自分がたたかれているかのような感覚につながり、少しひるんだり、少し遠ざかったりといった具合に、俳優の演技にもリアリティをもたらした。リー役のダンストは「特に建物の中にいるときはとてもうるさかった。ヘアメークのトレーラーはかなり離れているのに、ある爆発のシーンではトレーラー全体が揺れたんです」とその撮影のすざましさを証言している。

まるで戦場のまっただ中に放り込まれたような圧倒的な臨場感をもたらす本作。現実世界が不穏な空気に包まれている今だからこそ注目したい一本だ。

壬生 智裕:映画ライター

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