プーチンと国民の離反を狙うウクライナ軍の戦略 モスクワなど大都市への攻撃可能性も
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 21時0分
全世界を驚かせたウクライナ軍による電撃的なロシア西部クルスク州への越境攻撃開始から2024年9月6日で丸1カ月。越境作戦は続く一方、プーチン政権は第2次世界大戦以来、初めての自国領土侵略を撃退する目途をいまだにつけることができないでいる。
今ゼレンスキー大統領が本当に狙っているものは一体何なのか。それはプーチン政権にどのような影響を与えるのか。「ゼレンスキー戦略」の実像に迫った。
今回のクルスク越境攻撃について、2024年8月21日付「ロシア領侵攻でゼレンスキーは『勝ち馬』になれるか」で、侵攻の狙いについてこのよう に書いた。
〈ゼレンスキー政権は、ロシア領に占領地を確保したとの既成事実を背景に「力の立場」でロシアとの交渉に臨む、という新たな交渉力を得ることを狙っている〉
クルスク侵攻は「第2次反転攻勢」だ
これはこれで間違いではない。しかし今回の越境作戦はゼレンスキー政権が描いている、より大きな絵柄の戦略の一部に過ぎず、その戦略全体は、より多角的なものだということがわかった。
その意味で今ウクライナがロシア西部クルスクで始めたことは、単なる局地的作戦ではない。2023年6月に始めたものの、ロシア軍の頑強な防衛線を突破できず、頓挫した反転攻勢に続く、第2次反転攻勢と呼ぶべき作戦である。
ただ、今回の第2次反転攻勢の計画内容は第1次攻勢とはまったく性格が異なるものだ。その特徴は何か。
第1次反転攻勢は、ウクライナ東・南部などでロシア軍の防御線突破と被占領地奪還を目指した純軍事的作戦だった。これに対し今回は、攻撃対象を軍事目標だけに絞っていないのが特徴だ。
これは純軍事作戦に加え、すでにウクライナが一足先に始めていた各地の石油精製施設など重要経済関係施設へのドローン攻撃などを組み合わせた複合的作戦だ。プーチン政権に対し、軍事・経済両面で深刻な打撃を加えるのが狙いだ。
さらに、作戦の地理的広がりという点でも、ウクライナ東・南部が中心の地域戦だった第1次反転攻勢とは大きく異なる。西部国境州であるクルスク州に越境攻撃する一方で、首都モスクワを含めより広範な地域を攻撃対象としている。
大都市住民に「戦争の恐怖」を与える
その象徴が、2024年9月1日未明にモスクワ及びその周辺で起きたエネルギー関連施設への大規模なドローン攻撃だ。ウクライナ軍にとって、侵攻開始以来最大規模のドローン攻撃だった。首都の日常生活を脅かすことでロシア国民の心理的不安感を高めることも狙っている。
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