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登山・ボクシングと「3足のわらじ」履く医師の矜持 中東やアフリカの紛争地で外科医として活動

東洋経済オンライン / 2024年9月3日 16時0分

派遣先のイエメンでは課題もあったが、それまで準備してきたことが通用するという確かな「手ごたえ」があった=2015年5月(写真:©MSF)

国境なき医師団(Médecins Sans Frontières:MSF)の外科医、プロボクサー、世界7大陸の最高峰登頂――。そんな「3足のわらじ」を履く人物がいる。池田知也(42歳)。普段は日本の病院で勤務しながら、かくも果敢にチャレンジを続けることができるのか。

【写真で見る】国境なき医師団の外科医として初めて派遣された中東のイエメン。多くの患者は銃撃や爆撃の被害者だった

いずれはMSFの外科医として働く

池田さんがMSFに関心を持ったのは、高校3年生のとき。文化祭の講演で聞いた外科医の言葉に胸を打たれたという。

「その言葉は、『自分が何時間か寝たら、何人の人が亡くなる世界で働いている』というもの 。そのときに、将来は医師になって紛争地で働くと心に決めました」(池田さん)

医学部入学以降 は、「いずれはMSFの外科医として働く」という明確な目標のもと、さまざまなことにチャレンジした。

初期研修では、離島医療に力を入れる沖縄県立中部病院に入職。同院では診療科にかかわらず、すべての救急患者は初期研修医が対応することになっている。池田さんも臓器や診療科にかかわらず全身を診たという。

「月の当直は10回以上で、毎回、ほぼ寝る時間はなし。仕事を終えるのは日付が変わってから。おかげで、かなり鍛えられましたね」(池田さん)

後期研修では、 高度な手術で定評のある仙台厚生病院で外科医のスキルを磨いた。 専門は執刀する機会が多いという理由で消化器外科を選ぶ。実際、難易度の高い手術も含め、年間130件程度執刀していたという。

就職先の熊本赤十字病院の国際医療救援部では、2年間にわたり消化器外科以外の診療科――整形外科や産婦人科、心臓血管外科などで臨床経験を積む。MSFの活動地では、お産の際の帝王切開や火傷や銃創などの手術もあり、 整形外科の技術も求められるからだ。

そして医師8年目の2015年。選考試験を経て、MSFで外科医として活動を始める。

トラックの荷台で運ばれる負傷者

これまで赴いた活動地は、10回とも中東とアフリカの紛争下にある国々。池田さんら外科医は、主に戦闘で負傷した人たちを治療する活動を行う。

今年7月、池田さんは10回目の派遣から帰国した。活動したのはスーダンと南スーダンが領有権を争うアビエイという地域。前年の4月にスーダンで内戦が始まると、多くの負傷者が運び込まれた。

患者の多くは銃で撃たれた人で、トラックの荷台に載せられて一気にやってくる。池田さんは言う。

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