マレー半島、ジャングル縦走「夜行急行列車」の旅 首都クアラルンプールは都市交通が充実
東洋経済オンライン / 2024年9月3日 7時30分
この夜行列車は、カナダ製ディーゼル電気機関車が普通車5両、1等車1両、寝台車6両、食堂車1両、電源荷物車1両の14両編成を引くという堂々としたものだ。日本では客車夜行は絶滅してしまったが、かつての寝台特急ブルートレイン、あるいは夜行急行客車を思い起こさせる列車で、日本の鉄道ファンにもおすすめである。
しかし、筆者はこの列車に始発から終着まで乗り通したわけではない。ジョホールバールからトゥンパまでの742kmを途中のクアラリピスという小さな町で1泊し、2日をかけ、この夜行列車を含め3つの列車でたどった。理由は、夜行列車だけで通り過ぎてしまうと車窓が楽しめないからで、昼間に走る列車ばかりを選んだのである。このルートは熱帯ジャングルを行く車窓が魅力である。
前夜はジョホールバールに宿泊し、まずは朝のグマス行きのディーゼル電気機関車牽引の客車列車で北上した。この区間はクアラルンプールへ向かうのと同じルートで、現在は非電化区間であるが、電化工事中である。終着のグマスではクアラルンプール方面のバターワース行き電車と、クアラリピス行きディーゼルカーが接続する。バターワース行きは中国製電車、クアラリピス行きディーゼルカーも中国製で、エンジン発電モーター駆動の最新式である。
クアラリピスはマレー半島の中心よりやや北に位置する小さな街、ここで宿泊し、翌早朝、ジョホールバールからやってきた夜行列車に乗車した。
単線区間を、夜を徹してやってきた列車ではあるが、定刻に到着、多くの乗客があり、夜行列車としてだけでなく、昼間の利用も多かった。東の空が白みはじめ、車窓には熱帯のジャングルが広がり、列車は何度も小さな川を渡った。利用者は思いのほか多く、12両の客車はざっと70%程の乗車率で、小さな町々で客を降ろしては北へ向かった。
外国人観光客はわずかで、ほとんどが地元客である。単線なので反対方向の列車とは駅で行き違いになるが、昼間の列車はすべて中国製のエンジン発電モーター駆動の車両であった。終着駅トゥンパはコタバルという大きな街の郊外にある。実質的にはコタバルがマレーシア東海岸最北のタイと接する街となる。終着近くの沿線風景もどことなくタイに似ていた。
格安な運賃も嬉しい
ここのところ円安などから日本人の海外旅行熱が冷めているが、マレーシアは物価が安く旅行しやすかった。鉄道運賃はとくに安く、ジョホールバール―グマス間21リンギット、グマス―クアラリピス間9リンギット、そしてクアラリピス―トゥンパ間24リンギット、マレーシア最南端からタイとの国境近くの街までの運賃は合計54リンギット、日本円で約1800円である。この間の距離は742kmあるので、東京からだと岡山くらいまでの距離となり、いかに運賃が安いかがわかるだろう。マレーシアでは鉄道が上下分離方式となったものの、実質国鉄であるので、一般物価以上に安価である。
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