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実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史

東洋経済オンライン / 2024年9月4日 7時30分

ちなみに「本線級の路線で世界最古の1067mm軌間」を名乗るのは、1865年7月開通のオーストラリア・クイーンズランド州に敷設された鉄道だ。ただ、1862年6月にノルウェーの首都オスロ郊外に1067mm軌間の鉄道が敷設された記録もある。いずれにせよ、日本の鉄道開業前後の時期にはイギリス本国以外、植民地などで採用が広がっていた軌間といえるだろう。

黎明期の試行錯誤が生んだ「超広軌」

一方、イギリス本国では後に「国際標準軌」となる1435mm軌間を採用したが、当時のイギリスはまさに産業革命のさなかで、黎明期にはさまざまな軌間の鉄道が存在した。

その代表格が、1830年代から1840年代にかけて、著名な鉄道・建築技術者イザムバード・キングダム・ブルネルがグレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway=GWR)の建設に採用した2140mmという軌間だ。実に、日本の狭軌の倍もある。

この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。

だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた。

欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。

しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。

軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している。一般的には、高速・長距離の輸送を担う鉄道は列車をより安定して走らせられる標準軌やそれより広い広軌、日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。

一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。

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