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大昔、人類が生き延びたのは「犬のおかげ」だった? 3万年前「犬が人との生活を選んだ」といえる訳

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 17時0分

イヌには家族の一員と呼んでよい存在になる「性質」が備わっているようです(イラスト:にしやひさ/PIXTA)

気候変動、パンデミック、格差、戦争……、私たち人類を襲う未曽有の危機を前に、20万年にわたる人類史が岐路に立たされている――。そのように言っても、大袈裟に感じる読者は少ないのではないでしょうか。

そんな今、40億年の生命誌からヒトの生き方を問い直そうとしているのが、レジェンド研究者・中村桂子さんです。

科学の知見をもとに古今東西の思想や実践活動に学び、「本来の道」を探った著書『人類はどこで間違えたのか――土とヒトの生命誌』より一部抜粋・編集して、生き方を見つめ直すヒントをお届けします。

3万年前にイヌは人を「選んだ」

家畜化の研究は、主として2つの方向から行われています。1つは化石、もう1つがDNA解析(ゲノム全体を見る、特定の遺伝子を探るなどさまざまな方法)です。

新しい化石が出たり、分析法が開発されたりすると研究成果は変化しますので、これで決定とはいえませんが、3万年前(DNA解析の結果は4万~2万7000年前となる)頃には、イヌとして人間と共に暮らす動物がいたと考えてよさそうです。

農耕が始まったのは1万年ほど前とされますから、それ以前の狩猟採集の頃に、イヌという野生とは違う動物が私たち人間と一緒に暮らしていたことになります。

家畜化は、人間が自分の役に立てるために特定の生きものの特定の性質を変えていく過程です。後の時代になってのウシの場合、労働力として役立つ、乳をとるなどわかりやすい話です。

でも、イヌにはそのような特定の目的があったとは思えず、人間と暮らす生活をイヌが選んだといったほうがよいようにも思えます。家族になったといってもよいかもしれません。

DNA研究から面白いことがわかってきました。

人間のDNA解析から、超社会性(社交性が高く、おしゃべりが好きというような性質)に関連するとされる多型(同一種の個体で異なる表現型を示す)が見つかっているのですが、それと同じ多型がイヌにあるというのです(多型はオオカミにはありません)。

人もオオカミも社会性動物と呼ばれます。まさに「私たち」として生きる性質を持つ生きものです。その中からとくに社会性の高いものとしてイヌが生まれ、人間にも関心を持ったのでしょう。イヌには家族の一員と呼んでよい存在になる性質が備わっているようです。

赤ずきんちゃんだけでなく、『三匹の子豚』『オオカミと七匹の子山羊』、さらには『ピーターと狼』など、物語に登場するオオカミはどれも子どもにとって恐いものですが、別の見方をすれば、身近な存在だったともいえます。

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