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大昔、人類が生き延びたのは「犬のおかげ」だった? 3万年前「犬が人との生活を選んだ」といえる訳

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 17時0分

ただ、生きものの場合、望みの個体が得られるとは限りません。速く飛べてもけんかばかりしている個体では困ります。そもそもが自然の営為なので、なかなか思い通りにはなりません。

近年は遺伝子操作ができるようになりましたから、ダーウィンの頃よりは求める品種を得やすくはなりましたが、それでも遺伝子のはたらきが「自然」であることに変わりはなく、機械のようにはいきません。

生きものを対象にする時は、常にそこに「自然のはたらき」を意識しなければならないのです。それを忘れると大きなしっぺ返しがあると思っていたほうがよいでしょう。

ネアンデルタール人絶滅とイヌの関係

イヌについての興味深い話があります。

現存する人類はホモ・サピエンスだけですが、同時期にヨーロッパで暮らしていたネアンデルタール人は、なぜ滅んでしまったのかという疑問をめぐる話です。

ネアンデルタール人は脳も大きく、体格もがっしりしており、ホモ・サピエンスのほうがひ弱なのに、後者が生き残ったのは、猟犬がいたからだというのです。

ネアンデルタール人の食生活や石器を調べると、数十万年間、変化が見られません。独自の世界にこだわり、新しいことに積極的でなかったとされます。

ネアンデルタール人の絶滅時期は、4万年ほど前とされ、その頃気候変動があったことが知られています。しかも当時ネアンデルタール人は小さな集団で暮らし、ゲノム解析から、多様性に欠ける状態であったこともわかっており、3万年前頃までにはホラアナライオン、ホラアナハイエナなどと共に絶滅したとされます。

イヌという仲間の力を借りた

常に生きにくい環境になったとき、生きものの間での食糧の奪い合いが起きるわけですが、ホモ・サピエンスはイヌという仲間の力を借りて、狩りの場で優位に立ったという考えです(パット・シップマン『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』原書房)。

世界にこだわり、新しいことに積極的でなかったとされます。

この説を支えるのは、ベルギーのゴイエ洞窟で出土したイヌと同定される化石が3.6万年前のものとされるところから、旧石器時代からイヌという仲間がいた事実が明らかになったことです。

ネアンデルタール人の絶滅の理由にはさまざまな説が出されている状況であることを踏まえたうえで、興味深い説です。

頑なに従来の生活を守り続けたがゆえに滅びたネアンデルタールと、イヌとの協同に始まり、他の生きものと積極的に関わって牧畜、農業へと新しい生活を切り拓いていったホモ・サピエンスとを比べると、挑戦は大事だと思えます。

とはいえ、挑戦と同時に伝統の維持も忘れないのがよい生き方といえるのでしょう。

それにしても、人間は特別な存在であることも確かだけれど、動物の1つとして、他の仲間と関わりながら生きる存在でもあることを実感します。相手を利用するというような関係ではなく。

歴史を知り、これからを考える参考にしなければなりません。

中村 桂子:JT生命誌研究館名誉館長

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