海外でも「貯蓄+公的年金」で豊かな老後は難しい 働く意欲が湧く「シンガポールの年金制度」
東洋経済オンライン / 2024年9月5日 7時0分
なぜ、日本に比べて、アメリカやスイスでは豊かな高齢者が多いのか。このたび『世界標準の資産の増やし方』を刊行した、シンガポール在住のファイナンシャルプランナーの花輪陽子氏が、海外における一般的な老後の資産形成について解説する。
シンガポール在住、ファイナンシャルプランナーの花輪陽子です。シンガポールで欧米や中華系の方と日本人の消費や投資行動を比べていると、大きな違いがあると感じます。また、人生に対する明確な目標があるかどうかもお国柄が出ると感じます。
OECD諸国の家計金融資産に占める現金の割合(出典:『世界標準の資産の増やし方』)
日本人は貯金が大好きな国民です。「お金を減らしたくない」「万一の時に備えておきたい」という気持ちがとても強い人が多いと感じます。働いて稼いだお金を好きなことに使ったり、投資に回したりするよりも、貯める方が正しいという教育を社会から刷り込まれてきたこともあります。
貯金好きの日本人はお金持ちになれない
A子さんは10年前に子どもが生まれて、お祝い金などを受け取る度に銀行の定期預金に入れていました。そのうちの64万円が満期になったので、銀行から案内が来ました。明細を見て、利息の少なさに驚愕しました。税引き後の利息は、たったの2041円だったのです。0.04%の利息では10年間定期預金に預けていてもほとんど増えなかったのです。
その間に日経平均株価は1万4000円台(2014年)から2.5倍程度に増えています。もちろん子どもの学資金などを投資に回すのは考えものですが、資産の大部分を日本円の普通預金や定期預金にしている方も多いのではないでしょうか。そういう意味では、日本人の多くが資産を増やす好機を逃したと言えるかもしれません。
日銀の利上げを受け、メガバンクでは0.02%だった普通預金の金利を0.1%に引き上げました。約16年ぶりの高い水準です。日本でも金利がある世界に突入しようとしています。それでも5%程度利息がつく米ドル預金と比べるとまだまだ低い水準です。日本円の貯金だけではお金はほとんど増えないという問題は解消されたとはまだ言いにくい状況でしょう。
「世界一お金持ちの国、アメリカやスイスはなぜ豊かなのか」という答えは、預貯金を保有している割合の低さ、つまり、いかに積極的に資産運用を行っているかにありそうです。
主要国の家計金融資産(1人当たり)の推移を比べると、資産額が最も大 きいのはスイス(約35.4万米ドル)、アメリカ(約33.2万米ドル)、スウェーデン(21.5万米ドル)、日本(17.8万米ドル)、ドイツ(12.8万米ドル)と続きます(OECD Household financial assets 2022年時点)。
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