投資家も誤解、安易な配当増が企業をダメにする そもそも成長企業は配当しないことが理にかなう
東洋経済オンライン / 2024年9月5日 7時0分
2014年8月に公表された“伊藤レポート”で「ROE8%以上」という目標が唱えられてからちょうど10年。今回は、日本企業がこの10年間取り組んできたROE経営=株主重視経営を振り返りましょう。
株主重視の経営が浸透
2013年度の日本企業のROEは8.4%(TOPIX構成銘柄のうち402社の平均、経済産業省調査)でした。2024年3月期決算企業は9.5%(金融を除く2021社の平均、第一生命経済研究所調査)です。ベースが少し違いますが、この10年で日本企業のROEは約1%上昇しました。
上昇幅はわずか1%ですし、15%をゆうに超えるアメリカ企業との差は歴然としています。ただ、この10年間の日本企業の改革に及第点を与える市場関係者が多いようです。株主還元(配当・自己株買い)の強化など株主重視経営が浸透し、株価が上向いたからです。
日経平均は、2014年8月末1万5424円から2024年8月末3万8647円へと、2.5倍に跳ね上がりました。異次元の金融緩和の影響が大きいものの、株主重視経営が投資家の期待を高め、株価を押し上げたことも間違いないでしょう。
では、こうした株主重視経営を目指した改革で、日本企業はいい方向に進んでいるのでしょうか。筆者は、まったくそう思いません。
日本企業のこの10年間の「改革」について、もう少し踏み込んで振り返りましょう。
「ROE=当期純利益÷純資産」で、ROEを高めるには、「当期純利益を増やす」か、「純資産(=自己資本)を減らす」必要があります(あるいは両方)。具体的には、企業には以下3つの主要なアクションがあります。
①新事業・新商品の創造
②リストラ・事業再編
③株主還元
個々の企業によってまちまちですが、全体で見ると、日本企業が最も意欲的に取り組んだのが「③株主還元」、次いでかなり取り組んだのが「②リストラ・事業再編」、取り組みが足りなかったのが「①新事業・新商品の創造」です。「①<②<③」です。
かつて日本企業は「①新事業・新商品の創造」に熱心で、高度成長期には多くの革新的な工業製品を世に送り出しました。しかし、近年はデジタル化の波に乗り遅れて、世界を席巻する新事業・新商品はほとんど見かけません。
その一方で、日本企業は「③株主還元」に消極的でした。しかし、2023年度のTOPIX構成企業の配当総額は約19兆円で、10年前の約8兆円と比べて2倍以上に増加しています。自己株買いも、2023年度の日本企業の総額は約9兆7000億円(取得枠ベース)で、過去最高を更新しています。
株主還元は簡単にできる
この記事に関連するニュース
-
「デジタル投資→PBR1倍超」期待する人の深刻盲点 「企業の解散価値>株式価値」をどう改善する?
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時50分
-
トヨタがROE20%目標か その意義と日本株に与える影響は?
財経新聞 / 2025年1月11日 9時43分
-
三井不動産【8801】株式分割&株主優待で上場来高値後の低迷理由は? 3期連続最高益で巻き返しなるか
Finasee / 2024年12月26日 6時0分
-
物言う株主エリオットが狙った東京ガスの「急所」 低株価の原因見抜き、還元、資産売却へ圧力
東洋経済オンライン / 2024年12月20日 8時10分
-
決算好調な「くら寿司」&「スシロー」、株価は明暗が分かれる結果に…要因は、株主優待と寿司ネタ?
MONEYPLUS / 2024年12月19日 7時30分
ランキング
-
11時間半の山越えバスが“タダ”!? 岐阜山間部の2大都市を結ぶ無料シャトルバス運行
乗りものニュース / 2025年1月15日 14時12分
-
2「来週会合で利上げ判断」=米新政権政策、賃上げ注視―植田日銀総裁
時事通信 / 2025年1月15日 16時8分
-
3裏切られた気持ちでいっぱいです…月収25万円・65歳サラリーマン、毎年「ねんきん定期便」を必ずチェック、年金月19万円のはずが「初めての年金振込日」に知った衝撃事実に撃沈
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月15日 8時15分
-
4悪質なデータ復旧事業者「レスキュー商法」の手口 多発する「納得できない作業結果と費用請求」
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時0分
-
5《三菱UFJ銀行》10億円を奪った元行員・今村由香理(46)の夫は“4.5億円資産家”だった 駐車場収入も「奥さんが徴収に来ていましたよ」
文春オンライン / 2025年1月15日 16時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください