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カナダが"アジア系と共生する道"を選んだ経緯 アメリカよりも欧州、なかでも北欧に似ている

東洋経済オンライン / 2024年9月6日 17時0分

カナダではフランス語は英語と並ぶ公用語で、公的機関は英語とフランス語によるアクセスを保障しなければなりません(写真:artemlaktikov/PIXTA)

アメリカの隣国でありながら、アメリカとは全く異なる文化と風土を持つカナダ。知っているようで意外と知らないカナダという国を、元外交官として、そして個人として世界97カ国を見てきた山中俊之氏が、地政学に「政党」という切り口をプラスして分析します。

※本稿は山中俊之著『教養としての世界の政党』から一部抜粋・再構成したものです。

アメリカの隣なのに穏健でリベラルな風土

北米でG7のメンバーでもあるカナダはアメリカと隣接しており、同じ連邦制の国ですが、個人主義で自由競争のアメリカとは違う風土の国です。

【図を見る】カナダは政治的に国際協調を志向

歴史的には、先住民が住む土地に英国とフランスが入植し、フランスとの戦いに勝った英国が主に植民地化。現在はフランス語圏も抱えるイギリス連邦の「多文化共生の国」として独自の道を歩んでいます。英国と同じく立憲君主制で国家元首は英国国王です。

実際の政治体制は上院と下院の二院による議院内閣制です。選挙は単純小選挙区で、下院選挙で最多を取った政党が与党となり、一般的にその党のトップが首相となります。

本稿執筆時点での与党はトルドー首相の自由党。伝統的に、リベラルな自由党と保守党が競い合いつつ、全体的には「穏健でリベラル」というのが特徴です。2つの主要政党は競い合いながらも双方が中道寄りなので、どちらが政権を取っても極端な政策とはなりません。

……というのが教科書的な説明ですが、ビジネスパーソンの押さえておきたいポイントは別にあります。「多文化共生」と「地域色」です。どのようなものか、さっそく見ていきましょう。

文化共生の土壌の大きな要因は、ケベック州を中心としたフランス文化の存在にある――これが私の仮説その1です。

フランス語は英語と並ぶ公用語で、公的機関は英語とフランス語によるアクセスを保障しなければなりません。2つの言語が併存していることは、いろいろな文化を取り入れていく大きなきっかけになります。

さらにフランス文化と切り離せないのがカトリック。プロテスタントの多い英国の影響も大きいのですが、フランスの影響があるからこそ、アメリカのような「プロテスタントの国です!」という主張にはならず、2つの宗派が均衡しています。

社会的な礎は白人のキリスト教文化ですが、それ自体が言語的、宗教的に2つに分かれているので、多文化共生を育む土壌となったと言えます。

さまざまな価値観を認める多文化共生であれば、「うちの国が一番!」というナショナリズムは育ちにくい。したがって右派ポピュリズム政党は生まれにくいようです。

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