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カナダが"アジア系と共生する道"を選んだ経緯 アメリカよりも欧州、なかでも北欧に似ている

東洋経済オンライン / 2024年9月6日 17時0分

アジア系が多いのはカリフォルニアと似たところがありますが、国全体として比較すれば、アメリカよりカナダのほうがより“アジア系の多文化共生”の雰囲気を感じます。

多文化共生が法律化されている今、さまざまな文化を受け入れ、尊重するというリベラルな姿勢が、自由党と保守党、程度の差はありますが、どちらにも表れていると感じます。

地域政党、ケベック党

国全体としてリベラルなカナダ。その素養を政治的に体現しているのが地域政党の存在です。

全国政党は国のために、地域政党はその地域の利益を実現するために政治活動をするということ。カナダには州が10あり(準州は3)、全国区の自由党と保守党の他に地域政党がいくつもあります。

なかでも地域政党と言いながら全国第3位の議席数を持ち、発言権を持っているのが、ケベック州のケベック党(Parti Québécois)。ケベック州はフランス語が公用語でフランス文化を重んじ、独立運動が起きた過去もあります。ただし現在は「カナダの一員として独自の文化を守る」という立場で、これも多文化共生につながっています。

アメリカもまた広大な領土と50もの州をもつ国ですが、あれだけさまざまな民族や人種がいるのに、特に勢力のある地域政党はありません。

「カリフォルニアにヒスパニック系の政党、ニューヨークにユダヤ人の政党」

そうなっても不思議はないのに、文字通り“ユナイテッド(統合)”されているのかもしれません。

大国から距離を置く「北米の北欧」

多文化共生で移民に門戸を開く国際協調路線で、苛烈な自由競争よりも、国民生活にある程度、政府が介入しながら協調を選ぶ……。

「自由党にしても保守党にしても、アメリカよりもヨーロッパ、なかでも北欧に似ている」

カナダの政党に詳しい専門家と議論していると、私はそう感じます。それはすぐ隣の超大国から距離を置くという、ある種の知恵ではないかと思うのです。

カナダの場合、アメリカという超大国がすぐ南にあります。国内は競争社会、国外でも“世界の警察”もしくは“利害の対立”で、常に争いの渦中にいる、ドラえもんで言うならジャイアン的なお隣さんです。

北欧諸国の場合、“南側のお隣さん”はドイツ、フランス、イタリア。どの国も中世には領土の奪い合い、18世紀から第2次世界大戦には植民地の取り合いと、激しい戦争を繰り返してきました。そこで距離を置いていたのが北欧です。

「南のほうの人って激しすぎるよね。ちょっと一歩引いておこうか」

さらに北欧の場合、東にはロシアという“ジャイアン的なご近所さん”もいます。北欧、特にフィンランドは歴史的にロシアに巻き込まれていますし、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けた北欧諸国は「いやいやいや、私たち近所なだけで関係ないので!」とNATO寄りになっています。

このように見ていくと、北欧とカナダは似ていると感じます。カナダのリベラルとは、強大なお隣さんとは違う、独自の多文化共生の道を模索した結果なのかもしれません。

山中 俊之:神戸情報大学院大学 教授、国際教養作家、ファシリテーター

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