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富士ソフト争奪戦、カギを握る「不動産」の評価 KKR対ベイン、両雄対決の構図は必然だった

東洋経済オンライン / 2024年9月6日 8時0分

システム開発大手の富士ソフトを、なぜ大手ファンドが欲しがるのか(記者撮影)

独立系システム開発会社である富士ソフトの買収をめぐって、アメリカの2大ファンドが激突する異例の展開となった。

【図表】富士ソフトが抱える優良な不動産物件一覧

投資ファンドのベインキャピタルは9月3日、富士ソフトに非公開化を提案している事実を明らかにした。富士ソフトをめぐっては、同じく投資ファンドのKKRがTOB(株式公開買い付け)を表明しており、ベインが待ったをかけた形だ。提示した買収価格も6000億円規模と、KKRのそれより5%ほど高い。乱入に危機感を抱いたKKRは、9月中旬に開始予定だったTOBを9月5日に前倒しした。

ベインとKKRの共通項は、投資ファンドという点だけではない。両者とも、企業が保有する不動産にも着目している。富士ソフトは多数の自社ビルを保有しており、対峙はある意味で必然だった。

TOBにベインが「待った」

「買収者を公正に選定するプロセスを能動的に行っていない」。ベインの発表文には、富士ソフトの買収手続きに対する反発がにじむ。

買収の火ぶたが切られたのは2022年10月。富士ソフトが複数の投資ファンドに声をかけ、非公開化の余地を探ったのが始まりだ。資産査定や経営陣との面談を経て、2024年6月にKKRを含む2社から提案を受領。買収価格や相乗効果などを考慮して、7月にKKRが選定された。

ベインは入札手続きの進捗を知りながら、あえて参加しなかった。入札の主催者は筆頭株主でアクティビスト(モノ言う株主)の3Dインベストメント・パートナーズであり、富士ソフトは3Dのなすがまま。3D主導の買収に乗り気でないと見たベインは、富士ソフトとの直接交渉を模索。7月26日、独自に富士ソフトへ非公開化案を宛てた。

だが、3Dの頭越しに行われたベインの提案は一蹴され、KKRに白羽の矢が立った。富士ソフトの社外取締役で構成される第三者委員会は、「買収価格こそベインが勝るものの、3Dが応じるかは不透明。法的拘束力もなく、資金調達やTOBの確実性ではKKRが勝る」という趣旨の判断を下した。この点、ベインは「公開買い付けは実現可能性が高い」と反論している。

買収過程でひと悶着あったものの、今後はKKRとベインの価格競争に発展することは明白だ。では、なぜこの2社が富士ソフトに高値を提示できたのか。本業であるシステム開発の伸びしろも当然あるが、同社が保有する不動産に対する評価も見逃せない。

KKRが引き合いに出すのは、2022年に買収したJ-REIT(不動産投資信託)運用会社のKJRマネジメント(旧三菱商事・ユービーエス・リアルティ)との連携だ。買収した企業から不動産を切り離し、KJRに売り渡す青写真を描く(2022年4月3日配信 KKR、Jリート運用会社を「2300億円」で買収の衝撃)。

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