国語デキない社会人でも書ける「魔法の文章テク」 問いと答えを整理すれば誰でも書けるように
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 17時0分
コミュニケーション・会話も1つの「文章作り」だと定義できるでしょう。
相手の話に対して「なんで?」と聞くことを一切してはいけないし、「どうして?」と尋ねることもできない。そんな状況で、相手とコミュニケーションを取ることはできないでしょう。
「聞いてよ、こんなことがあったんだよ!」と一方的に自分の話をしているときでさえ、その裏側には「こんなことがあったんだよ、どう思う?」という問いが存在していますよね。問いはコミュニケーションの基本なのです。
小説に関しても同じことが言えます。ミステリー小説は作中でなんらかの事件が起こり、その事件の真相がだんだんと明らかになっていきますよね。これは、事件という「問い」があって、その答えが作中で明らかになっていくというものです。
「その事件の犯人はなぜそんなことをしたのか? どうやってその事件を引き起こしたのか? 誰がその事件の犯人なのか? 」という問いの答えが、探偵役によって明らかになります。恋愛小説では帯に「この恋の行方は?」なんて書いてあることがありますが、やっぱりこれも「問い」ですよね。
童話や文学作品であっても同じです。童話「北風と太陽」は、旅人に対して北風が強い風で強引に服を脱がせようとするも失敗し、太陽が暖かく照らすことで旅人が自分から服を脱いでくれるという作品です。
これも「相手に自分の主張を受け入れてもらうためには、どうすればいいのか?」という問いに対する答えを教えてくれるものだったと言えます。
会話やさまざまな文章の中に「問い」はある
日常会話や、評論、新聞、小説、漫画、すべての中のどこかに「質問」が存在するのです。「問い」があって、会話や文章の中に「答え」も示されています。
つまり、文章を書きたいと思ったら「問い」を考える必要があるのです。「どうやって自己紹介しよう?」と考えているうちは、文章は書けません。でも、「自己紹介をするうえで、相手が気になるであろう質問を考えてみよう」と考えると、文章が書けるようになります。
「この本について話してください」と言われても文章は書けませんが、「この本のどこが面白かったですか? それはなぜですか?」と聞かれたら答えることができるようになるはずです。「問い」を明確にすれば、文章が書けるようになるはずなのです。
学校の国語の授業というのは実は、この「問い」の仕方を学んでいたのだと言えます。いろんな文章を読んで、「どんな問いがあって、文章が展開されているのか」を知るための授業が行われています。
だからこそ、「この作者は何を言いたいのか?」「『〜〜〜』とあるが、それはなぜか答えなさい」というような国語の試験が課されていたのです。国語の授業は、文章を作るうえでいちばん重要な『問いの技術』を磨くための訓練だったのです。
国語の授業は決して無駄ではない
そのことが理解されていないがために、「国語の授業を真面目に聞いていたのに文章が書けるようにならなかった」と思っている人が多いのは非常に悲しいことです。決して国語の授業は無駄なものではないのです。
一方で「問いの技術を磨けば文章が書けるようになる」といういちばん大事なメッセージが抜け落ちているために、多くの人が無駄だと感じてしまっているのだと思います。今からでも遅くありません。このことを理解して、さまざまな文章に触れてみていただければと思います。
辻 孝宗:西大和学園中学校・高等学校教諭
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