60歳を過ぎたら「たかが便秘」では済まされない 「大きなウンチ」を「しっかり出す」が腸活の基本
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 8時0分
つまり、酪酸を増やすことが、大腸がんの予防につながるというわけです。炭水化物を食べ、善玉菌にしっかりエサを与えて腸の中に短鎖脂肪酸を増やしてあげることが、発がん性物質の発生を抑えるのみならず、遺伝子レベルでもがんの増殖を防ぐための効果を発揮するのです。
「潰瘍性大腸炎」「クローン病」などの病気も予防
今、日本では大腸がんをはじめとして、腸の病気に苦しむ人が増えています。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こして、下痢や腹痛を伴う病気です。難病に指定されていて、日本では約17万人の患者がおり、老若男女関係なく発症するとされています。近年、急速に患者数が増えています。
また、同じように腸に炎症が起こり、腹痛や下痢をもたらすクローン病も増加傾向にあります。こちらも難病に指定されている病気で、小腸や大腸での発症頻度が高く、日本には約4万人の患者がいるとされています。
潰瘍性大腸炎もクローン病も、腸管での免疫機能が暴走することで、腸管に炎症が起きると考えられ、炎症性腸疾患(IBD)と総称されています。
動物実験で実証された「食物繊維」の効果
これらの病気も、レジスタントスターチ(食物繊維)を摂取することで症状が緩和する可能性のあることが、ブタを使った実験で示されています。ブタは人間と腸の長さがほぼ同じため、研究に使われることが多い動物です。
その実験では、ブタにレジスタントスターチの少ないコーンスターチ(トウモロコシのでんぷん)と、レジスタントスターチが多い非加熱のジャガイモをそれぞれ14週間食べさせたところ、非加熱のジャガイモを与えたブタのほうが、明らかに炎症性腸疾患の症状が緩和したのです。
また、炎症性腸疾患には、短鎖脂肪酸の1つである「酪酸」が治療に有効だと示唆する実験もあります。
慶応義塾大学の長谷耕二教授らの実験では、酪酸を結合させたでんぷんを、大腸炎を起こしているマウスに与えたところ、与えていないマウスに比べて免疫の暴走を抑える細胞(制御性T細胞)が2倍ほどに増え、その結果、大腸炎の症状が緩和したといいます。
このことから、腸内に酪酸を増やしていけば、炎症性腸疾患(IBD)の改善効果が期待できるといえます。
特に潰瘍性大腸炎は、直腸部分から炎症が起こることが研究で明らかにされています。したがって炭水化物を冷やすことで増えるレジスタントスターチならば、直腸まで善玉菌を届けることができるため、改善効果が期待できるというわけです。
食物繊維についていろいろ述べましたが、腸を元気にする食物繊維をしっかり摂ることは、命に関わるような重大な病気を予防することにもつながるということがわかっていただけたのではないでしょうか。
笠岡 誠一:文教大学健康栄養学部教授
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
寒くなるとお腹の調子が悪い→“大病予備軍”の可能性も…あなたは大丈夫?「お腹の健康状態」がわかる15のチェックリスト【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月4日 14時0分
-
脱・正月太り…健康な大腸内で作り出される「天然の痩せ薬」の正体【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月3日 14時0分
-
腹痛を何度も繰り返すなら「大腸憩室炎」を疑え…命に関わるケースも
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月27日 9時26分
-
認知症や大腸がんのリスク増…「腸漏れ」を改善させる食事のススメ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月20日 9時26分
-
「大腸がん」は早期発見・早期治療が重要 - 初期症状はある?
マイナビニュース / 2024年12月18日 11時0分
ランキング
-
1芸能人なぜ呼び捨て?「日本語呼び方ルール」の謎 日鉄会長の「バイデン呼び」は実際に失礼なのか
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 9時20分
-
2急増する大手黒字企業リストラのシビアな背景…2024年「早期・希望退職」1万人超え、前年比3倍に
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
-
3高齢者は「体重」が重要…標準を下回ると死亡リスクが急上昇
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
-
4「室内寒暖差がつらい…」その要因と対策が明らかに! - 三菱電機が紹介
マイナビニュース / 2025年1月14日 16時10分
-
5感染症の家庭内感染を防ぐために…温度と湿度、入浴、食事はどうしたらいいのか?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください