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出撃後ほぼ「全滅」日本海軍潜水艦の最大欠点 攻撃をかわす長時間潜航が可能な空調があったら…

東洋経済オンライン / 2024年9月7日 9時0分

ただし、どちらかといえば日本潜水艦が活躍できなかった原因を述べたにすぎない。日本潜水艦は戦果を挙げられなかった。対してアメリカ側は日本潜水艦をよく攻撃できた。それを説明する材料でしかない。

潜水艦のことごとくが沈んだ理由からは、実はやや離れた説明だ。いずれも日本潜水艦がアメリカ海軍の攻撃をかわせなかった、逃げ切れなかった理由でもないからである。

では、その理由はなにか。

それは、潜航状態を長く続けられなかったためだ。水中活動時間が短すぎたため、アメリカの駆逐艦や航空部隊の攻撃をかわし続け、逃れ切るまでには至らなかった。

潜航すれば、日本潜水艦でもアメリカ海軍の攻撃は回避できた。浮上状態で見つかっても、攻撃を受ける前に潜ってしまえば簡単には沈められなかった。

今でもそうだが、ソーナーには確実性はない。当時、水中にいる潜水艦の発見は今でいうアクティブ方式のソーナーに頼っていた。駆逐艦から音を出し潜水艦から反射して戻るのを探知するやり方である。ただ、原理的に探知不能の状態も発生する。また当時の技術水準から探知距離もあまり長くはなかった。

しかも、午後には利きが悪くなった。理論の説明は省くが、昼間の日差しにより海水温が上昇するためである。

海表面から始まる温度上昇がソーナーの深さまで達すると、潜水艦は探知できなくなる。当時の駆逐艦は、午後になるとそのような状態に達した。

潜水艦の騒音探知も容易ではない。駆逐艦は聴音機、今でいうパッシブ式ソーナーも装備していた。ただ、当時の駆逐艦は小さいため聴音機と騒音源の距離は取れない。駆逐艦自身のエンジンやスクリュー音で聞こえなくなる事態が生じていたのだ。

そのうえ、どちらの方法も潜水艦が冷水層に入り込むとお手上げである。ほどんどの条件で、音響は温度変化層を通過できない。駆逐艦からの捜索音波は潜水艦には届かないし、潜水艦側の騒音も駆逐艦には届かなくなるのである。

攻撃の成功率も低かった。

基本となる爆雷攻撃は面倒であり、不確実でもあった。3分後に潜水艦がいる場所を推測し、そのわずかに先に駆逐艦を移動させ、そのうえで爆雷を投下する必要がある。

さらに、その将来位置の推測もいまひとつであり、投下する爆雷の弾道や沈下速度にもブレがあった。いきおい、攻撃は不確かとなるため1度や2度の攻撃では潜水艦は沈められなかった。

潜水艦も攻撃回避に努めた。針路の急変更や加減速で将来位置を変化させれば、照準を外せた。爆雷も水圧設定爆発なら深度変更でかわせる可能性もあった。

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