イチ早く「一条天皇退位」見据えた"道長の非情" 失態繰り返す伊周を横目に道長が通った相手
東洋経済オンライン / 2024年9月8日 8時0分
こんなパフォーマンスをしたところで、「そうだ、第1皇子である敦康親王をもっと大切に扱おう!」とみなが思うわけもない。ただただひんしゅく買うだけの行動であるところが、なんとも伊周らしい。
伊周の外戚や縁者が、彰子や敦成親王、そして道長を呪詛したという疑いをかけられて、処罰されるのは、それからしばらくしてからのことだ。伊周がその首謀者として、処分されている。
一条天皇としては、彰子との間に敦成親王が生まれてもなお、亡き定子の忘れ形見である敦康親王こそ自身の後継者に、と考えていた。それだけに、伊周の力も必要としたに違いないが、みなから反感を買うなかで呪詛の疑いをかけられた状態では、フォローもできるはずがない。やむなく、一条天皇は伊周の朝参を停止させている。
伊周の失脚で一条天皇や敦康親王にも影響が
伊周が自身の言動のまずさから失脚するのは自業自得だが、そのことで、一条天皇や敦康親王の立場も悪くなる。そこまで思いが及べば、感情に流されずに、慎重な行動がとれたのではないだろうか。
道長は自身の孫である敦成親王を皇太子にするようにと、行成を通じて、一条天皇にアプローチしながら、盛んにある男のもとへと通うようになる。その男とは、のちに三条天皇となる居貞親王だ。
敦成親王が生まれるや否や、道長は「一条天皇の退位後」を誰よりも早く見据えて、動き始めたのである。
【参考文献】
山本利達校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』(新潮社)
『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)
『藤原行成「権記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)
倉本一宏編『現代語訳 小右記』(吉川弘文館)
源顕兼編、伊東玉美訳『古事談』 (ちくま学芸文庫)
桑原博史解説『新潮日本古典集成〈新装版〉 無名草子』 (新潮社)
今井源衛『紫式部』(吉川弘文館)
倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書)
関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』 (朝日新書)
繁田信一『殴り合う貴族たち』(柏書房)
倉本一宏『藤原伊周・隆家』(ミネルヴァ書房)
真山知幸『偉人名言迷言事典』(笠間書院)
真山 知幸:著述家
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