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フィンランドの彼女が「ちょっといい卵」買う理由 欧州に広がる「ソーシャルジャスティス」とは?

東洋経済オンライン / 2024年9月8日 10時0分

フィンランドでお世話になった家族は買い物の際、自然とオーガニックの卵を手にしていた(写真:筆者撮影)

あるときはキューバの家庭の台所に立ち、またあるときはブルガリアでヨーグルト料理を探究して牧場へ向かう。訪れた国と地域は25︎以上、滞在した家庭は150以上。世界各地の家庭を巡りながら一緒に料理をし、その土地の食を通じて社会や暮らしに迫る「世界の台所探検家」の岡根谷実里さん。今回はフィンランドとアイスランドの台所からお届けします。

買い物で「いい商品」を自然に選択

フィンランドの家庭に滞在中、買い物に行くと、いつもどきどきしていた。家族は「いい商品」を自然に選択するのだ。環境によいもの、動物の権利に配慮しているもの、倫理的なものーー。特別意識が高いわけではなく、声高にサステナビリティを唱えるのでもなく、自然にそちらに手が伸びるというか。

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理由を聞くと、ちょっと考えながら説明してくれるけれど、論理的に考えて吟味して選んでいるというよりも、「だってこっちのほうがいいよね?」というくらいさらりと決めているように見えるのだ。

湖に囲まれたフィンランド東部に住むこの家族は、夫婦ともに獣医で、3人の子どもたちは小学校から大学まで皆公立の学校に通っている。特別豊かでも貧しくもなく、フィンランドに住む他の人たちと同じくらい森が好きで、よくベリーやきのこを摘みにいく。そんな家族だった。

野菜や穀物はできるだけ近隣で生産されたものを選ぶ。「多少高いけれど、農業は国土と風景を作るものだからね。私はフィンランドの風景が好きで、美しいライ麦畑がずっと続いてほしいから」。

卵は必ずオーガニック。EUのオーガニック基準では、オーガニック飼料を使うだけでなく、群れあたりの飼育羽数や飼育環境にも基準があり、鶏にストレスの少ない環境で育てられている。「何でもかんでもオーガニックを選ぶわけではないけれど、卵は高くてもオーガニックのものを買うと決めているの。鶏が生き生きと生活できる環境で育てられているからね」と彼女は言う。

日本の卵は鶏舎でのケージ飼いが一般的。一羽あたりの床面積はB5サイズ程度しかなく、過密な環境でのストレスや、つつきあいで羽は落ちてボロボロな姿になる。低コストで衛生的に卵を生産できる日本の鶏舎技術は世界でも高い水準で、「価格の優等生」と呼ばれる卵を供給し続けた貢献は大きい。

一方で、アニマルウェルフェア観点からは課題があるのもたしかで、EUではケージ飼いは禁止されている。なのでどの卵を買っても軽量ケージや平飼いなど「それなりにいい環境」で育ったことは保証されている。しかし彼女は獣医という職業柄もあって、家畜の飼育環境には関心が高く、それでは十分でないと感じるのだそうだ。

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