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フィンランドの彼女が「ちょっといい卵」買う理由 欧州に広がる「ソーシャルジャスティス」とは?

東洋経済オンライン / 2024年9月8日 10時0分

「オーガニックの規定を満たした養鶏場のほうが、より広々とした自由な環境で鶏を飼育している。私は喜んでそこにお金を使いたいと思うの」。スーパーに行けばひたすら一番安い卵を狙って買う自分は、一緒に買い物に行くたび常に恥ずかしくてならなかった。

商品パッケージにもさまざまな「メッセージ」

別の家族と年末のスーパーに行った時は、クリスマス後で安くなっているスモークサーモンを手に取った母さんがふと手を止めた。「こっちはノルウェー産だけれどあっちはフィンランド産でMSC認証付き。認証はあんまりわかんないけど、少しの値段差ならあっちにしようかね」と棚に戻して1割ほど割高な方に手を伸ばした。MSC認証とは、水産資源等に配慮した持続可能な漁業に関する認証だ。

マーガリンの蓋を開ければ、「この容器は従来のものより38%プラスチック使用量を削減しておりリサイクル可能です」という中蓋のメッセージに遭遇する。

チョコの箱を開けると、原料のカカオ豆がいかに公正で環境負荷の低い方法で生産されたかが語られている。お米のミルク粥の作り方を確認しようと米の袋の背面を返したら、レシピではなく「省エネクッキングのコツ」が指南された。なんてこった。

はたしてこれらのメッセージは、人々の購買の後押しになるのだろうか。わからないけれど、まったく関心に上らない事柄だったらこんなにパッケージの目立つところに書かないだろう。恥ずかしながら、私はそこにグッと惹かれる人間ではない。だからそんな表示を見ると、自分が品格の低い人間だという事実を突きつけられているようで直視できず、目を逸らしてしまうのだった。

「ソーシャルジャスティス」って何?

北欧のアイスランドでお世話になったソフィアさんも、そんな「ちょっといいものを手に取る人」の1人だった。大学の教育学部で研究しているからか、わからないことは根気よく教えてくれる姿勢の持ち主で、社会的な視点ももっているので思い切って聞いてみた。

「どうしてちょっと高いものを、自分には別に得がないのに選ぶことができるの?私にとっては安いとか、おいしいとか自分にとっての利益が大事で、人のために追加でお金を払おうと思えないんだけど」

すると彼女は私の目を見て言った。「ソーシャルジャスティス(social justice)って聞いたことある?アイスランドはじめ北欧諸国で基盤となる考え方だよ。私の専門の教育分野でもこの概念は大事で、社会のあらゆる場面で礎となっているんだ」。

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