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フィンランドの彼女が「ちょっといい卵」買う理由 欧州に広がる「ソーシャルジャスティス」とは?

東洋経済オンライン / 2024年9月8日 10時0分

ソーシャルジャスティス?直訳すると、社会正義。聞いたことがあるような、ないような。なんとなく意味は想像できるけれどよくわからない。

しかし、調べてみると、たしかにこのソーシャルジャスティスという考え方は生活や社会の隅々に通じていて、買物はじめ食のシーンで感じていた日本とヨーロッパの違いの原因が、少し理解できるような気がした。

ソーシャルジャスティスという言葉の発祥は、18世紀末に遡る。イギリスから産業革命が始まる中で、資本家による労働者の搾取に対して抗議の表現として登場したもののようだ。19世紀に入り、産業革命とともに労働問題がヨーロッパ全土に広がっていくと、進歩的な思想家や政治活動家の革命的なスローガンとして広まっていった。

そんなうねりのなかで、1919年国際労働機関(ILO)が設立される。ILOは、労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国際連合の専門機関で、国連組織の中で最古の機関である。そのILO憲章の冒頭に掲げられているのが、以下の一文だ。

「世界の永続する平和は、ソーシャルジャスティスを基礎としてのみ確立することができる」

労働者の権利を保障するために生まれたソーシャルジャスティスという概念は、100年あまりの時を経て、世界平和の礎ともなる考え方として明文化されたのだ。

労働は、あらゆる生産活動の原動力だ。そこに畑があっても、人が動かないと小麦は育たないしパンはできない。人が働くことで物やサービスがうまれるわけで、その労働の対価が最終的な値段に反映されていると考えると、安いものの裏には不当な労働がある可能性がある。

「環境正義」という概念の根本にあるもの

食も例外ではない。安価なチョコレートの裏に正当な労働はあるのか。低賃金で長時間働いたり、劣悪な環境だったり、子どもを働かせたりはしていないか。フェアトレードという概念にも通ずるそういった意識が生まれてくるのは、歴史の流れを考えると自然なことかもしれない。

この考えを発展させると、人権や差別といった問題に関心は広がり、さらに、動物に不当な苦痛を強いていないか、自然資源を搾取していないか、といった人間以外の周辺環境に広がっていく。

1980年代のアメリカでは「環境正義(environmental justice)」という概念が生まれ、社会運動となっていった。なるほどと思ったのは、その根本にあるのが「自然環境を搾取してはいけない」という自然界への正義心ではなく、「搾取することによって悪化した環境の被害を真っ先に被るのは社会的に弱い立場の人たちだから」という、人間社会に対する正義心であるという点だ。自分のためではないけれど、やっぱり自分たち人間のため、自分の生きる社会のための利益なのだ。

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