1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを 蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点克服

東洋経済オンライン / 2024年9月9日 8時0分

以上により、蓄電池や長期蓄エネ(LDES)を活用し、国産再エネを大量導入することで、電力の安定供給と脱炭素化とを両立させうることを示した。しかもこの経路は、脱炭素化を最小費用で実現する道であり、電力自給率は、現在よりもはるかに高くなる(現在の18%⇒88%)。経済合理的かつ経済安全保障上、優れた選択だといえよう。またこの結論は、統合費用 を考慮したとしても、再エネが最小コストの電源であることを示している。

総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会の事務局資料(第59回、2024年7月23日、資料1、スライド5枚目)に示されているように、原油、ガスなど鉱物性燃料の2023年の輸入金額は26兆円にも上り、貿易赤字の最大要因である。これは自動車、半導体製造装置などで稼いだ金額(約29兆円)をほぼ打ち消すほどの規模だ。

こうした日本のエネルギーシステムの海外依存体質は持続可能ではなく、抜本的な転換が必要である。本稿冒頭で示した、エネルギー基本計画をめぐる議論の場で示された再エネへの疑問への回答として、本分析結果の結論を以下のようにまとめたい。

①再エネが第1の脱炭素電源であることは疑いなく、②&⑤電力需要の増大が見込まれるとしても、再エネはその量的拡大によって十分需要に応えうる。ただし、変動性を制御するために蓄電池と水素への投資を進め、それらが短・長期の十分な蓄電機能を果たすことが条件となる。

③自然条件の課題は、洋上風力への展開(とくに浮体式)、そして住宅・建築物や農地への太陽光発電のさらなる展開で克服可能である。

④再エネ機器の高い海外依存度によるデメリットはたしかにあるが、化石燃料の大量輸入がもたらす巨額の貿易赤字を、再エネ大量導入で解消できることのメリットのほうがはるかに巨大である。

本分析では 、再エネ電力とグリーン水素製造は国産化を前提としている。政府や産業界のシナリオによれば、水素は現在、海外から輸入する前提となっており、脱炭素化は日本の貿易赤字をいっそう増大させる要因になりかねない。本分析によれば、再エネ電力とグリーン水素製造の国産化により国内産業を振興し、貿易赤字の最大要因を解消することになる。これこそ、日本経済の成長を加速させる道ではないだろうか。

[引用文献]
P. J. Heptonstall and R. J. K. Gross, “A systematic review of the costs and impacts of integrating variable renewables into power grids.” Nature Energy. 6, 72-83, 2021. https://doi.org/10.1038/s41560-020-00695-4

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください