エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを 蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点克服
東洋経済オンライン / 2024年9月9日 8時0分
他方、第7次エネルギー基本計画の審議では、いまだに「ベースロード電源」の概念が喧伝され、 予見性・確実性をもたらす電源として24時間定格運転が可能な火力発電や原発が望ましいという意見表明がなされている。
だが、「ベースロード電源」という概念は国際的にはもはや死滅しつつあり、「柔軟性」に取って代わられている。それに伴って再エネの変動性や不確実性は、上記の幅広い対策によって十分対処可能なものと考えられている。重要なのは、供給側・需要側の両面で柔軟性を高めることにあり、再エネの変動性を吸収しうるよう、電力システムの力を高めることだ。解くべき課題の設定が変化しつつある点に気づいていないのは、日本だけかもしれない。
カーボンニュートラルに向けた費用最小化の経路
次に、2050年に電力の脱炭素化を最小費用で実現する経路に関するシミュレーション結果を紹介しよう。下表に電源種別ごとの設備容量、発電電力量に占める割合(電源構成)、炭素強度、システムコスト、電力自給率等をまとめた。電力需要は電化率の上昇により、2050年までに2020年の1.5倍になると想定している。
結論の第1は、発電費用がもっとも安価な電源として太陽光と風力が選ばれ、主力電源になるということだ。2040年には両者合わせて発電電力量の58%、2050年には75%まで増加する。これらの割合が増加した結果、1日未満の短期の変動性に対処するため、蓄電池が2030年代から本格導入される。
結論の第2は、地域間連系線の強化や、再エネ種別のバランスに合わせた蓄電池の導入により、電力の安定供給を確保しつつコストは横ばいに抑え、2040年までに炭素強度(排出係数)を8割以上引き下げられるということだ。
ただ、蓄電池は単位エネルギー(キロワット時)当たりのエネルギー貯蔵費用が高いため、電力を大量に長期貯蔵できず、数日から数カ月にわたる長期の変動再エネの発電の落ち込みに対応できないという問題がある。2030年代までは天然ガス火力がこうした長期の落ち込みを支える機能を担うが、最終的なカーボンニュートラル化において、この点を克服するのが水素だ。
結論の第3は、脱炭素の最終段階(2040年代)に、天然ガス火力を再エネ(とくに大きく伸びる洋上風力)で置き換えることである。反面、その(季節間)変動性の克服も課題になる。そこで、再エネ電力が余るときは、それを電源とする水の電気分解により「グリーン水素」を国内で製造し、タンクなどで貯蔵すれば、長期蓄エネ(LDES: Long-duration energy storage)として機能する。必要な際に燃料電池などで電力に戻すことができる。
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