エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを 蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点克服
東洋経済オンライン / 2024年9月9日 8時0分
再エネ大量導入で国産化可能な「グリーン水素」
水素は国内で製造する方法と、海外の安価な電力で製造して液化して輸入する方法がある。日本で水素政策が議論されるときは、もっぱら後者が前提にされているように見受けられる。後者のほうが安価だから、という理由だ。ところが本研究は、その反対の結論を引き出した。さまざまな仮定を置いて国産と海外輸入の経済性を比較したところ、ほとんどのケースで国産水素のほうが安価であることが示された。輸入水素の需要は小さく、国産水素を製造して長期エネルギー貯蔵を行うほうが経済的であることがわかった。
海に囲まれた日本が遠方から水素を輸入する場合、天然ガスと同様に液化して輸送し、そこから気化することが最も安価な方法である。この点は、陸上の天然ガスパイプラインを改修して利用できるアメリカやヨーロッパとは大きく異なる。
その液化、輸送、気化の際に多くのエネルギーが失われる。さらに、港や液化設備などの関連設備の整備には巨額の投資が必要になる。仮に再エネ電力が非常に安価な国(オーストラリアなど)で水素を製造したとしても、液化、輸送、気化などのプロセスを通じて日本で利用する段階では数倍の費用がかかる。それは輸送が容易とされるアンモニアなどに改質して輸送し、水素に戻す場合でも本質的には同じことである。日本政府が掲げる非常に野心的な20円/Nm3(ノルマル立方メートル)という供給コストで水素を輸入できたとしても、さまざまな再エネ・蓄エネの技術コストを置いて費用最小化計算を行った結果、ほとんどのケースで国産水素によるLDESが選択される(すなわち国産水素のほうが安価である)ことが示された。
また上図のとおり、短期と長期のエネルギー貯蔵のニーズを蓄電池と水素で分担することで、排出ゼロ化の費用を大幅に引き下げることができる。蓄電池は年間を通じて毎日充放電を繰り返す一方、水素は安価な余剰電力が多い春などの時期に大量のエネルギーを貯め、残余需要が多い冬などの時期に貯めたエネルギーで発電する。このため、システムコストを抑えられる。
余剰再エネによる国産の「グリーン水素」の戦略的な活用は、ガス火力をゼロにする電力システムの脱炭素化の最終段階(2040年代)のコストを引き下げ、電力自給率の向上に資する。さらに、水素や水素由来のアンモニアなどの燃料は、石油に替わるエネルギーの戦略的備蓄、船舶や航空機など長距離輸送の燃料、化学産業などの原料として活用することが期待され、電力部門を超えてエネルギーシステム全体の安価な脱炭素化を可能にする。
電力の脱炭素化を通じて日本経済の成長へ
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