JR東海リニア「名古屋―新大阪」着工時期の矛盾 国がゴリ押し「2037年全線開業」高いハードル
東洋経済オンライン / 2024年9月9日 7時30分
あくまで「今すぐ始めれば」である。実際には静岡工区の着工時期について見通しは立っていない。
政府主張「2037年全線開業」が抱える問題
2027年開業断念を発表した後、JR東海は発注予定において山梨県駅の工期を2031年12月までと発表した。ほかに8月時点で公表されている発注予定を見ると第二大井トンネル、座光寺高架橋、道志川橋梁の工期はそれぞれ2030年3月、2031年3月、2030年3月となっている。これらをもって「2027年まで完成しない工区は静岡以外にもある」と主張する声も聞く。
が、リニアを担当する宇野護副会長は次のように話す。
「静岡以外でもスケジュールがタイトな工区があるのは事実。人手不足、資材高騰など工事をめぐる環境が厳しい中、お金をかければ2027年に間に合う可能性がある工区もあるが、いま無理をして2027年に間に合わせるのは合理的ではない」
経営判断としては自然だ。JR東海は今後の各工区の進め方について検討を進めており、これから発注する工事についても「工期は合理的に設定する」としている。
そこで気になるのは、政府が2037年の全線開業を主張していることだ。名古屋―新大阪間の工事についての詳細は決定していないが、まだ2027年で予定されていた品川―名古屋間の開業後、速やかに工事を始めて2037年に全線開業するという前提に立てば、名古屋―新大阪間の工期は10年ということになる。だとすると、2027年には着工する必要がある。
しかし、2027年はまだ品川―名古屋間の工事を行っている時期だ。となると、経営リスクを減らすために工事を2段階に分けるというJR東海の方針に反する。
2段階での工事が必要な理由は財務面だけではない。JR東海の人繰りの理由もある。2段階スキームにおいては、品川―名古屋間の工事を担当したスタッフが、同区間の開業後に名古屋―新大阪間の工事に移行する。そうすることで人員を効率的に活用することができる。しかし、両区間の工事が重複すると、人員を増やす必要が生じかねない。この人員増はJR東海の長期的な人事戦略に直結する。
さらに、建設現場の人手不足が顕在化する中で、十分な作業員を確保できるかどうか。人手不足が解消できないのに工事をしたら安全面に支障が出かねない。こちらのほうが重要な問題だ。
名古屋から先「2027年着工」へ動き出した?
工事を行う前には環境影響評価を行う必要がある。
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