アメリカの株価が下落する懸念が高まってきた 今後の利下げで本当に市場は落ち着くのか
東洋経済オンライン / 2024年9月9日 10時30分
日米の株式市場の値動きが、再び荒っぽくなっている。きっかけは、少し前になるが、やはり7月30~31日に開かれたアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表後に行われたFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長の会見だろう。
すでに市場は9月17~18日のFOMCでの利下げを確実だと見なしているが、パウエル議長が利下げ転換に踏み切る可能性に言及したのは7月会合が初めてだった。「このままインフレが順調に落ち着いてくるなら、利下げを検討することになる」との見方を示したことで、利下げはいよいよ実現する可能性が高まった。だが、これが結局のところ、当面の買い材料出尽くしとなってしまったというわけだ。
今までの市場が楽観的すぎた?
利下げが株価の上昇材料となりにくくなったことで、ここから市場の注目は当然のように同国の景気動向に移った。FOMC後に発表された7月ISM製造業景況指数や7月雇用統計が低調だったことから8月初旬は景気減速に対する懸念が高まり、長期金利の急速な低下→円高→日本株暴落の一因をつくることになった。
その後、米国株は何事もなかったように、NYダウ工業株30種平均などは8月30日に史上最高値を更新したものの、結局は9月1週目に再び景気下振れリスクが再燃。3日に発表された8月ISM景況感指数が7月に続きに弱かっただけでなく、6日の8月雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比14.2万人増となった。
これは市場予想を下回っただけでなく、過去の6・7月分も下方修正された。S&P500種指数は1週間で約4%も下落したが、売り一色の状態になったのは必然だったといえる。
なぜ市場の変動率が大きくなっているのか。理由は比較的簡単だろう。実はアメリカの景気減速は今に始まったことではない。すでに、FRBが昨年7月のFOMCで政策金利であるFF金利誘導目標を年5.25~5.50%に引き上げて以降、すでに1年以上景気抑制的な金利が維持されていることの影響を考えれば、むしろ悪化は遅すぎたといってもいいくらいだ。
それでも株価が堅調で、何度も史上最高値を更新してきたのは、AI(人工知能)に対する過度の期待や、利下げで景気悪化が食い止められるという楽観的な見方が支配的で、景気減速のリスクが過小評価され続けてきたからだろう。
より長期的な視点に立つと、AIは確かに経済を加速度的に発展される可能性を秘めている。だが、過剰なまでの投資効果がすぐに表れるわけではない。
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