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北海道が提案、函館「新幹線アクセス線廃止」の愚 運転手不足なのに4000人超をバスで運べる?

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 7時30分

函館本線の倶知安―小樽間も大変な混雑で1両の定員が99人で扉の間口が広いH100形気動車でも時には積み残しがでるほど乗降に難儀している状況から、前出の関係者によると「バス1~2台ではとてもさばける状況にない」という。JR北海道は、あまりの混雑から2024年2月には、日中の一部の列車を2両編成のH100形から、3両編成ロングシートで1両の定員が141~153人のキハ201系に置き換えて運行を行った。当初は2月3日から18日まで限定的に実施する予定だったが、その後もしばらくの間、週末にキハ201系の運行が継続された。

新幹線ができればインバウンド客はすべて新幹線に移るという楽観的な声もあるが、そもそもドライバーが足りていない中で、そのドライバーを長万部―倶知安―小樽間の鉄道代替バスの運行に充ててしまえば、倶知安駅から各観光拠点を結ぶバスを確保できなくなる懸念が生じる。

さらに地域の交通網は黒松内、倶知安、余市で分断され現状の在来線よりも時間がかかり居住性の劣るバスに置き換わると小樽方面に向かう高校生の通学等も困難になり、地域経済や住民生活に混乱が生じることが予測される。また、こうした楽観論は2次交通として在来線を活用することで経済効果を地域に波及させる視点がない点も問題だ。

国土交通省では2018年より「鉄道における自動運転技術検討会」を定期的に開き、2022年9月には「地方鉄道にも自動運転の導入を想定する」という方針を取りまとめている。これまでの鉄道の自動運転は、踏切のない全線立体交差でかつホームドアが完備された都市部の路線では実用化されていた。これを国家資格を持たない前方監視員を乗務させることで踏切もありホームドアも普及していない地方鉄道にも拡大していこうというものだ。バスドライバー不足から鉄道路線の廃止が公共交通機関の消滅に直結する地方にとっては、前方監視員乗務型の鉄道自動運転の普及が交通崩壊の歯止めになる可能性も考えられる。

質問に正しく答えられない北海道

こうしたことを踏まえて、筆者は道の交通企画課に対して、「バスドライバー不足が深刻化し長万部―小樽間の廃止を強引に決定したことについて批判が出ている中で、なぜ、函館―長万部間もバス転換にこだわるのか」、「なぜ、昨今の鉄道プロジェクトにおいて一般的に用いられる費用便益分析などの多面的な評価を行おうとしないのか」という質問を2点ぶつけてみたところ、担当の山中徹也主幹は「函館バスと実務的な検討を進めることを協議会の場で確認した」、「今後の多面的な検討の必要性が協議会の場で判断されれば選択肢として否定されるものではない」と回答した。

要するに道が言いたいのは「今後の検討次第」ということだが、「なぜ提案したのか」という筆者の質問には正面から答えていない。道はなぜ鉄路廃止にこだわるのか。鉄路を経済発展や観光振興に活かす手立てについても検討すべきではないだろうか。

櫛田 泉:経済ジャーナリスト

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