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「最後の1人まで」イスラエルで続く解放の祈り 訪日した元人質、ノア・アルガマニさんの証言

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 9時0分

人質解放を訴えるために訪日したノア・アルガマニさん(右から3人目)と、父親のヤコブさん(右隣)。ノアさんはハマスの人質となり解放された。日本ユダヤ教団で(写真・在日本国イスラエル大使館提供)

イスラエル・ハマス戦争が始まって2024年9月で11カ月が経った。イスラエル国民の最大の関心事は、今も拉致されたままの人質101人の安否である。

2024年8月末に人質6人の遺体が回収された。6人は直前まで生きていたが、IDF(イスラエル国防軍)の接近を察知したハマスによって殺害された。

現地の報道によると、ハマスはIDFの戦闘部隊が近づいてきたら、現場にいる人間が人質を殺害するよう指示を出しているという。2024年6月8日、イスラエルが「アルノン作戦」で人質4人の奪還に成功したことを受けて出された指示らしい。6人の死亡推定時刻は、検死の48~72時間前で、頭部などに銃撃の跡が確認されている。

生存者数はいまだ不明

人質101人のうち数十人はすでに死亡していると推測されており、生存者が何人いるのか明確ではない。今後、IDFが救出しようとすれば射殺される恐れもある。アメリカがエジプトやカタールと主導する人質解放交渉も難航しており、イスラエルにとって先行きは決して明るくない。

そのような中、一筋の希望がもたらされた。2024年8月27日、拉致されて326日目に人質1人が救出されたのである。生還したのはカイード・ファルハン・アルカディさん(53)、イスラエル南部ラハトに住むベドウィンの男性である。11人の父親で、末っ子は父親がいない間に1歳になっていた。

アルカディさんは2023年10月7月、ガザ周辺地区のキブツ・マゲンで警備の仕事に従事していた際に拉致され、ガザへ連れ去られた。銃弾によって足を負傷していたが、しばらくすると、ほぼ麻酔なしで銃弾を取り出す処置が施された。その痛みは尋常ではなかった。

当初は、他の人質1人と一緒にアパートの部屋に拘束された。2カ月後に他の1人が亡くなると、アルカディさんはトンネルに監禁された。少なくとも8カ月間、太陽の光を見ることもなくずっと独りだった。

アルカディさんの属するベドウィンとは、砂漠地帯に住む遊牧民族である。イスラエルの南部に約30万人、北部に約11万人、その他の地域も含めると総勢で約45万人が居住し、イスラエル総人口の約3.5%に当たる少数派だ。イスラエル国籍を有するベドウィンはヘブライ語も話すが、母語はアラビア語でイスラム教徒である。

ハマスらテロリストにとっては、相手がアラビア語を話すイスラム教徒であろうが関係ない。イスラエルに住む人間は皆、彼らにとって「敵」なのである。同様に、イスラエル国籍を持つアラブ人や出稼ぎ労働に来ていたタイ人も、10月7日に拉致・殺害されている。

トンネル内でも許された祈り

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